第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O69] 一般演題・口演69
リハビリテーション06

2019年3月1日(金) 16:00 〜 16:50 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:三島 健太郎(順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科)

[O69-1] 開心術待機患者の退院時SPPBとFSS-ICUとの関連について

井出 篤嗣1, 前野 理恵1, 浦中 康子2, 笠間 啓一郎2, 松本 淳2 (1.横浜市立市民病院 リハビリテーション部, 2.横浜市立市民病院 心臓血管外科)

【背景】開心術後の患者において当院では,日本循環器学会ガイドラインに準じICUから退院までのシームレス化されたリハビリテーションを提供している.しかし術前ADLが自立していても,ICU滞在時からADLが低下し,改善しないまま自宅退院が困難もしくは遅延する症例が存在する.先行文献では影響する因子として緊急手術症例や透析症例など複数挙げられているが,ICU内でのADL評価から検討した研究はない.今回退院時の身体機能評価とICUでのADL評価の関連性を比較検討することとした.【目的】開心術待機患者における退院時のShort Physical Performance Battery(SPPB)とICU退室時のFunctional Status Score for the ICU(FSS-ICU)との関連を調べ,比較検討する.【方法】2017年4月から2018年3月までの1年間の開心術症例中, CABG及び心臓弁膜手術55例を抽出した. 術前ADLが低下していた6症例は除外した.また,緊急手術12症例 ,透析2症例 , 術後脳梗塞1症例 , データ不足2症例を除いた32例を対象とし,後方視的に検討した. 対象の平均は67.3±9.1歳で,女性は41%であった.退院時身体機能はSPPBを用いて評価し, 10点をカットオフ値とした高値群21例と低値群11例に分類した.評価項目は,術前因子( 年齢 , 性別 , 術式 , BNP , Hb , CRP , ALB , LVEF )・術中因子( 出血量 , 手術時間 , 麻酔時間 , 人工心肺時間 )・術後因子( 在院期間 , ICU在室期間 , 人工呼吸器装着期間 , 立位までの期間 , 歩行開始までの期間 , FSS-ICU , MRC-SS , 退院時の Hb , CRP , ALB , 片脚立位 , 歩行速度 , SPPB , B.I. )とし,各評価項目を比較検討した.統計学的処理にはJSTATを用いて統計処理し,有意水準を5%未満とした.【結果】退院時SPPB高値群は低値群と比較し,術前因子において性別 男性16 vs 3 : p<0.05 で有意差を認めた。術後因子においてはFSS-ICU(点) 中央値23 vs 18 : p<0.001, 術後歩行開始までの期間(日) 中央値2 vs 3 : p<0.05, 片脚立位(sec) 中央値20 vs 8.5 : p<0.05 , 歩行速度(m/sec) 中央値1.1 vs 0.7 : p<0.001, B.I(点) 中央値100 vs 95 : p<0.001で退院時SPPB高値群が低値群に比べ有意差を認めた. 他は有意差を認めなかった.【結論】退院時SPPB低値症例は,術前に ADLが自立していてもICU退室時にADL低下を来していた. FSS-ICUが低値の症例には, 一般病棟へ移動後により集中的なリハビリテーションが望ましいと思われた.