第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O69] 一般演題・口演69
リハビリテーション06

2019年3月1日(金) 16:00 〜 16:50 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:三島 健太郎(順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科)

[O69-5] 心臓血管外科患者の術後認知機能とFunctional Independence Measure(FIM)認知項目との関係

児島 範明1, 松木 良介1,2, 大浦 啓輔1,2, 森沢 知之1,3, 恵飛須 俊彦2,4, 端野 琢哉2,5 (1.関西電力病院 リハビリテーション部, 2.関西電力医学研究所, 3.兵庫医療大学 リハビリテーション学部 理学療法科, 4.関西電力病院 リハビリテーション科, 5.関西電力病院 救急集中治療センター)

【背景】ICUに入室する心臓血管外科術後患者は術後に認知機能低下を合併することが問題視されており,近年,入院中の認知機能やADLの維持・改善がリハビリテーションの課題である.一方で,術後低下した認知機能が退院時のADLと関係しているかは明らかではなく,認知機能のどの領域に対して介入すべきか一定の見解はない.そのため,術後認知機能とADLとの関係を明らかにすることは,今後ICU入室早期から認知機能へのリハビリテーションを行う上で重要な意味を持つと考えられる.
【目的】術後心臓血管外科患者の退院時認知機能低下が退院時ADLと関連するという仮説に基づき,術前と退院時の各認知機能検査を比較検討し,退院時の各認知機能検査と退院時ADLとの関係を調査することを目的とした.
【方法】本調査はCross sectional studyである.対象は2016年1月から2018年8月までに当院で待機的心臓血管外科術を受け,かつICUに入室した患者81例である.除外基準は脳血管障害や認知症の診断,入院前の著明な認知機能低下,入院前ADLが非自立の患者とした.主要アウトカムである対象者の認知機能検査は総合的認知機能:MoCA-J,注意機能:TMT-AとTMT-B,前頭葉機能:FAB,ADL:FIM認知項目を用い,スコアが収集可能であった者を最終解析対象者とした.また,術後認知機能低下の定義はMoCA-JもしくはFABの退院時値-術前値≦-2点とした.調査項目は患者背景,手術情報,術後経過を後方視的に収集した.統計学的解析は,術前と退院時における各認知機能検査の比較はWilcoxon符号順位検定を用い,退院時の各認知機能検査と退院時FIM認知項目との関係についてはSpearmanの順位相関係数を算出し検討した(有意水準:p<0.05).
【結果】対象は41例(年齢68.0(17.0)歳)であった.術後ICU滞在中のせん妄は8例(19.5%),退院時の認知機能低下は10例(24.4%)に認めた.各認知機能検査(術前/退院時)の比較検討ではMoCA-J:24.0(5.5)/26.0(6.5)点(p=0.001),TMT-B:96.0(39.0)/100.0(96.0)秒(p=0.02),FIM認知項目:35.0(1.0)/33.0(3.5)点(p=0.000)に有意な差を認めた.また退院時FIM認知項目と退院時の各認知機能検査との関係は,MoCA-J(r=0.43),TMT-B(r=-0.34),FAB(r=0.65)に有意な相関を認めた.
【結論】心臓血管外科患者は退院時のMoCA-J,TMT-B,FIM認知項目において有意な変化を認め,退院時のFIM認知項目に対して注意機能と前頭葉機能との関係が示唆された.