[O7-2] チューブリークに起因したリバーストリガを認めたARDS症例
【背景】患者―人工呼吸器非同調は人工呼吸期間、ICU滞在期間及び死亡率を増加させる頻度の高い有害事象であるが、その認識は十分とは言えない。リバーストリガは強制換気に誘発された横隔膜収縮であり、深い鎮静状態にある患者に生じやすい。【症例】67歳男性(161cm、55kg)。開腹ドレナージ術後3日目に呼吸不全でICUに入室した(第0病日)。両側肺浸潤陰影とPaO2/FIO2比120 mmHgの低酸素血症を認めたため、フェンタニルによる鎮静下に従圧式アシストコントロール換気による人工呼吸を開始した。第4病日、ニューモシスチス肺炎と診断された。第9病日、SpO2 92%の維持にPEEP 14cmH2O、FIO2 0.8を要した。第11病日、RASS-1の鎮静状態において、人工呼吸器のグラフィック波形で頻回の二段トリガを認めた。食道内圧(Pes)と気道内圧(Paw)の同時モニタリングを行うと、オートトリガに誘発されたリバーストリガを認めた(図)。気管チューブのカフ圧を調節してリークを除去することでオートトリガが消失し、自発呼吸が先行する補助換気に復帰した。【結語】浅い鎮静状態のARDS患者で、オートトリガを誘因としたリバーストリガを観察した。リバーストリガは、肺傷害的な一回換気量の増加を伴う二段トリガの原因になり得る。一般的に、二段トリガは設定吸気時間の延長によって予防できるが、その原因がオートトリガに引き続いたリバーストリガである場合、オートトリガの原因が消失した瞬間吸気終了が遅延し、動的肺過膨張を招く可能性がある点に注意が必要と考えられた。