[O7-3] 腹臥位療法が循環動態に及ぼす効果の検討
【背景】 PROSEVA Trialで初めてmoderate/severe ARDSに対する早期からの長時間腹臥位療法が酸素化能だけでなく死亡率を有意に改善することが実証された。しかし、腹臥位療法の有益性はいまだ不明瞭な部分も多い。そこで、今回当院ICUで重症呼吸不全に対して腹臥位療法を導入した3症例について循環動態に着目し検討する。【臨床経過】症例1:74歳男性。2型糖尿病、肺気腫、慢性腎臓病の既往。急性心筋梗塞を発症し、経皮的冠動脈形成術中に循環動態不安定となり体外補助循環(VA-ECMO)が導入された。経過中に肺炎・ARDSを併発した。循環動態の安定化に伴い、VA-ECMOからVV-ECMOへ移行し、肺炎・ARDSも改善を認めVV-ECMOからも離脱した。しかし、ECMO離脱後に右心不全及び高二酸化炭素血症の治療に難渋し、第37病日から間欠的に15日間腹臥位療法を行った。ガス交換及び循環動態も改善傾向となり、カテコラミンの投与も終了し、第64病日にICUを退室した。症例2:69歳男性。心筋梗塞の既往。多発性骨髄腫に対する抗癌化学療法中に、インフルエンザ肺炎・細菌性肺炎を発症した。第3病日から経鼻高流量酸素療法下に腹臥位療法を導入。しかしさらに呼吸状態悪化したため第5病日に気管挿管人工呼吸器管理とした。その後も腹臥位療法は継続したが、呼吸状態・循環動態が悪化し、第11病日に死亡した。症例3:53歳男性。心房細動の既往。喫煙歴あり。間質性肺炎の急性増悪による重症呼吸不全に対して気管挿管人工呼吸器管理としたが、低酸素血症は改善せず高二酸化炭素血症も進行した。同時に循環動態が不安定でノルアドレナリンの投与も要した。心エコー上、右心不全徴候も認めた。第7病日から間欠的に6日間腹臥位療法を行った。腹臥位療法導入後からガス交換及び循環動態が改善傾向となり、ノルアドレナリンの投与も終了し、第17病日に抜管した。【結論】 当院ICUではARDSに限らず、重症呼吸不全患者に対して積極的に腹臥位療法を行う方針としている。腹臥位療法により低酸素血症と高二酸化炭素血症の改善を得るだけでなく、右心不全の改善をも得ることができると考えている。特に症例1,3では呼吸状態の改善とともに循環動態も安定化した。本発表にて3症例を比較検討することで、腹臥位療法と循環動態改善についての関連を示したい。