[O7-4] 有瘻性膿胸・敗血症性ショックに対しECMO管理下に気管支ブロッカーと気管支充填術を行い救命できた1例
【背景】有瘻性膿胸の治療としては栄養の適正化,抗菌薬、ドレナージに加え、大網充填術や胸腔鏡下膿胸腔掻爬術などの外科治療、近年であれば気管支充填術などが知られている。今回我々は耐術能のない重症呼吸不全患者に対し、集学的治療で救命し得た1例を経験したため報告する。【臨床経過】精神疾患の既往のある70歳男性が呼吸困難を主訴に当院へ救急搬送となった。来院時のバイタルサインはGCSE4V4M6、体温38.2℃、呼吸数30回/分、血圧93/57mmHg、心拍138回/分、SpO2 81%(酸素10L/分)であった。CTで右膿胸・両側肺炎と診断し、右胸腔ドレーンを挿入して排膿を行ったが改善せず、挿管・人工呼吸器管理とした。ドレーンからは持続的なエアリークがみられ、気管支鏡で右下葉枝が胸腔と瘻孔を形成している所見を認めたため有瘻性膿胸と診断した。ドレーン挿入後に左片肺挿管や右主気管支への気管支ブロッカー挿入を行ったがSpO2維持できず、VV-ECMOを導入して集中治療室に入室とした。入室後、肺保護換気・抗菌薬投与を行いつつ、健側である左側への膿の垂れ込みとエアリークを防ぐ目的で右中間幹にブロッカーを挿入した。敗血症性ショックの状態から改善傾向となった入院第4日目に、エアリーク根治目的で責任気管支へのEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)の充填を行い、エアリーク量の減少と酸素化の改善が得られた。その後、入院第6日目に気管切開を行い、入院第7日目にVV-ECMOを離脱したが、VV-ECMO離脱後、体位によりエアリーク量が増減しSpO2の変動がみられたため、第11病日にEWSによる追加処置を行った。経過中に外科的治療を検討したが、EWS、抗菌薬投与、体位ドレナージ、栄養療法などによる治療で、徐々にエアリークは消失し呼吸状態も改善し、 第27病日に集中治療室退室、第34病日に人工呼吸器から離脱できた。なお、膿の培養からはStreptococcus milleri groupが検出された。【結論】 重症呼吸不全を有する有瘻性膿胸の患者では、気管支ブロッカーと気管支充填術を併用することで健常肺の保護と膿胸の治癒を期待することができる。