[O7-5] 重症呼吸不全を伴う肺炎球菌肺炎に対し早期にV-V ECMOを導入し救命しえた一例
症例は59歳男性。近医でA型インフルエンザと診断された3日後、自宅内で倒れているのを訪問した知人に発見され当院へ救急搬送された。来院時、頻呼吸と著明な低酸素血症の状態であった。胸部CTにて両側の肺炎像を認めたほか、A型インフルエンザおよび尿中肺炎球菌抗原陽性であったことから、A型インフルエンザに合併した肺炎球菌性肺炎と診断し、救急外来にて緊急気管挿管、人工呼吸器管理を開始しICU入室とした。また、腎機能障害のほか、挿管時にピンク状泡沫痰も認め非心原性肺水腫を呈していたことから、急性呼吸促迫症候群 (acute respiratory distress syndrome;ARDS)も合併しており、呼吸不全増悪の一因と考えられた。ICU入室後、抗菌薬投与、持続緩徐式血液濾過透析を開始した。カテコラミン投与下で循環動態は維持できていたが、人工呼吸器管理開始から5時間経過した時点でも、P/F比 80前後から改善なかったため、体外式膜型人工肺 (veno-venous extracorporeal membrane oxygenation;V-V ECMO)導入の方針とした。以降、V-V ECMO管理下で全身管理を継続し、第5病日には自己肺の酸素化能も改善し始めた。ECMO離脱のタイミングを検討していたが、第7病日に人工呼吸器設定をPEEP 8から15へ上昇したことが原因と考えられる左気胸および、縦隔気腫を合併し、胸腔ドレナージを要した。人工呼吸器の圧設定を再度下げ、ECMO管理の継続を余儀なくされたが、第10病日にはECMO flow 1.0L/minおよびsweep gas 0.21まで下げても人工呼吸器のみで肺酸素化能が保てるようになり、同日ECMO離脱に至った。その後、気胸および縦隔気腫も改善が得られ、第21病日に人工呼吸器より離脱、経過中一時的に血液透析を導入したものの、第22病日には腎代替療法からも離脱できた。第23病日にICU退室、第56病日に独歩退院となった。肺炎やARDSによる重症呼吸不全に対し、V-V ECMOを導入した症例の報告は近年増えてきている。本症例でも、経過中に合併症は来たしたが、遅滞のないECMO導入により良好な転帰を得ることができた。今回、若干の文献的考察も含め報告する。