第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

外傷・熱傷 症例

[O77] 一般演題・口演77
外傷・熱傷 症例01

Sat. Mar 2, 2019 2:40 PM - 3:20 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:山口 均(一宮市立市民病院救命救急センター)

[O77-3] 未治療の肝硬変による門脈系短絡路の出血のため、治療に難渋した外傷性腹腔内出血の一症例

郭 光徳, 豊原 隆, 豊原 つばさ, 宮下 龍, 其田 一 (市立釧路総合病院救急・麻酔科)

【背景】<BR>外傷性静脈系損傷に対するパッキング止血術は、Damage Control Resuscitation(以下DCR)の基本戦略の一つである。今回、未治療の肝硬変に起因する上腸間膜静脈-下大静脈短絡路の損傷により2度のパッキングを行い、治療に難渋した症例を経験したので報告する。<BR>【臨床経過】<BR>68歳男性。身長178cm、体重68kg。既往歴、入院歴なし。乗用車運転中に対向車と正面衝突して受傷。当院にヘリ搬送となった。来院時、血圧91/59mmHg、脈拍91回/分、SpO299%(6L/分)、呼吸数14回/min、腋下温35.7度、意識レベルはGCS E4V4M5 であった。造影CTにて肝下面から下結腸間膜にかけてextravasationと血腫を認め、腹腔内出血と判断し緊急試験開腹手術となった。開腹所見にて、肝硬変が原因と思われる上腸間膜静脈から下大静脈への短絡路が存在した。短絡路の末梢血管が破綻しており、そこから多量に出血していた。出血の制御不能と判断し、タオルパッキングし閉腹した。48時間後の第3病日、Hb9.8、PT-INR1.24、fibrinogen529、pH7.37、腋下温37度と貧血や凝固因子、体温などが安定して来た為、根治目的での再手術を施行した。パッキングを解除すると、前回の出血源と考えられた部位から多量の再出血を認めた。再度パッキングし閉腹した。2回目の手術から96時間後の第7病日、3回目の手術を施行した。術野の出血を減らす目的で左大腿動脈よりブロックバルーンを挿入し、右の大腿動静脈からカテーテルを挿入して上腸間膜動脈起始部と上腸間膜静脈-下大静脈短絡路の排血路にマイクロバルーンを留置した。しかしながら、3回目の開腹所見ではパッキングを解除しても再出血せず、ブロックバルーンやマイクロバルーンを拡張せずとも新たな出血は認められなかった。腹腔内を洗浄し、ドレーンを留置して閉腹した。患者は現在肝硬変の治療をしながらリハビリ中だが、その後腹腔内出血は認めていない。<BR>【結論】通常の静脈系とは血行動態が異なる門脈系短絡路の出血では、パッキングだけでは止血が不十分な可能性があり、手術の際には出血源へのdirect approachが可能となる準備体制も必要と思われる。