第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

外傷・熱傷 症例

[O78] 一般演題・口演78
外傷・熱傷 症例02

2019年3月2日(土) 15:20 〜 16:00 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:津久田 純平(聖マリアンナ医科大学 救急医学)

[O78-3] 交通事故により脊椎損傷を伴わない頚胸部脊髄損傷及び外傷性腰部脊髄硬膜外血腫を生じた3か月男児

染谷 真紀1, 黒澤 寛史1, 青木 一憲1, 制野 勇介1, 長井 勇樹1, 長谷川 智巳1, 河村 淳史2, 小山 淳二2 (1.兵庫県立こども病院 小児集中治療科, 2.兵庫県立こども病院 脳神経外科)

【背景】小児の脊髄損傷は稀であり、成人を含めた脊椎・脊髄の外傷全体の1割にも満たない。また、外傷性脊髄硬膜外血腫(Traumatic spinal epidural hematoma:TSEH)は非常に稀で、1869年に初めて小児脊髄硬膜外血腫の報告がなされて以来、小児TSEHの報告は12例のみで、腰椎レベルのTSEHの報告はなく、脊髄損傷とTSEHの合併症例の報告はない。今回、交通外傷を契機とする頚胸髄損傷及び腰部TSEHを認めた乳児例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は3か月男児。直進軽自動車対右折普通乗用車の交通事故で軽自動車に乗車中、児は助手席で母に縦抱きだっこされ母と一緒にシートベルトをした状態で受傷し、前方からのエアバックが作動した。右肋骨多発骨折、右外傷性気胸、両側肺挫傷、フレイルチェスト、左上腕骨多発骨折を認めた。挿管人工呼吸管理、輸液負荷、輸血、ノルアドレナリン投与を要した。凝固異常は認めなかった。受傷後2日目、末梢は温かく両上肢及び頭部の自発的な動きは認めたが、両下肢は痛み刺激にも反応が見られなかった。脊椎CT検査及び脊髄超音波検査で下位腰椎から仙椎レベルに液貯留が疑われ、緊急手術を施行、硬膜外血腫を認めた。血腫除去術後も両下肢の動きは足趾や足関節のわずかな動きのみであった。ノルアドレナリンは漸減終了できたが、軽微な刺激による血圧の変動は残存した。受傷後5日目、頭部・全脊髄MRI検査を施行したところ、C6-Th2レベルで脊柱管内の信号変化を認め、その背側に液貯留が疑われた。同日緊急手術を施行、髄液漏出、硬膜の広範な損傷、露出された脊髄背側の著しい挫傷性変化を認めた。いずれの画像検査でも骨傷、血管奇形は認めなかった。受傷3週間現在、気管切開下に人工呼吸管理中であり、対麻痺を認めている。【結論】小児の外傷において脊髄損傷及びTSEHの発生は稀であるが、臨床経過からこれらが疑われた場合には、画像評価を考慮すべきである。