[O79-4] 外傷症例の既往疾患別acute respiratory distress syndrome (ARDS)合併リスク評価
【背景】外傷はacute respiratory distress syndrome (ARDS)合併のリスク因子のひとつとされるが、外傷症例の既往疾患とARDS合併の関連は不明である。【目的】呼吸器既往疾患を持つ外傷症例のARDS合併リスクが高いと仮説をたて検証した。【方法】[研究デザイン]ARDSを合併した外傷例と合併しなかった外傷症例の既往疾患を評価したmatched case-control studyである。[対象患者]2004年1月から2015年12月までJapan Trauma Data Bank (JTDB)に登録され、AIS3以上の外傷を1箇所以上持った症例を対象とした。18歳未満・妊婦・AIS6の外傷を持つ症例・救急外来での死亡例・院外または救急外来で病院前胸骨圧迫、病院前除細動、救急外来での胸骨圧迫、救急外来での開胸心臓マッサージを含む蘇生処置施行例・来院時収縮期血圧0mmHgの症例を除外した。[主要評価項目]外傷症例の既往疾患別ARDS合併リスクを評価した。[統計解析]施設・受傷年・年齢・性別・外傷重症度によりARDSの診断やリスク因子の分布が異なる可能性があり、これらのバランスのためロジスティック回帰一般化線形混合モデルを用いARDS合併を推定する傾向スコアを求めた。そしてWithin-cluster propensity score matchingを行い、施設・受傷年・性別のクラスターごとのARDS合併群と非合併群から1:1でマッチするペアを抽出した。マッチ後コホートを用いて、ARDS合併群/非合併の二群間でARDS合併リスク因子を比較した。【結果】2004年から2015年までの間で217907例の外傷症例がJTDBに登録された。適応/除外基準とマッチングにより、ARDS合併群/ARDS非合併群はそれぞれ524例が解析対象となった。既往疾患のうちARDS群の慢性心不全・COPD・胃潰瘍・糖尿病併存率がそれぞれ4.4%・3.1%・3.1%・14.7%とARDS非合併群と比較して有意に高値であった。【結論】呼吸器疾患以外の既往疾患も外傷症例のARDSリスクとなる可能性が示唆された。