第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

呼吸 研究

[O83] 一般演題・口演83
呼吸 研究02

Sat. Mar 2, 2019 9:35 AM - 10:25 AM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:芹田 良平(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院集中治療科)

[O83-5] 維持透析患者における心臓血管外科手術後の長期人工呼吸管理に関するリスク因子の検討

中村 さやか, 田中 愛子, 酒井 佳奈紀, 田中 智彦, 髭野 亮太, 坂口 了太, 吉田 健史, 平松 大典, 内山 昭則, 藤野 裕士 (大阪大学医学部付属病院 集中治療部)

[背景]維持透析患者の術後管理は体液バランス管理が難しく特に心臓血管外科手術症例では合併疾患も多く早期の抜管は困難であることが多い。維持透析患者における心臓手術後の長期人工呼吸管理のリスク因子を検討した。[目的・方法]2014年4月から2018年3月までに当院ICUに入室した心臓血管外科術後患者のうち術前から維持透析を行っていた60症例を後方視的に検討した。検討項目は術前およびICU入室後の循環動態および透析状況、手術内容・時間と術中バランス、患者予後とした。術後72時間以内に人工呼吸を離脱した群 (E群:27例) と離脱しなかった群 (D群:23例) の2群に分け比較した。術前因子、術中因子とICU入室後24時間のデータを用いて多変量解析を行った。[結果]患者背景ではD群は糖尿病合併患者が少なく(E群: 57 vs. D群: 30 %, p = 0.04)心臓血管外科周術期リスクを予測するEuroSCORE2が有意に高かった(5.76 vs. 8.11, p = 0.01)。両群の術前のカテコラミンおよび機械的補助循環の使用、APACHE2scoreには差がなかった。術中因子ではD群は手術時間が長く(274 vs. 401 min, p<0.001)、術中出血(1000 vs. 1800ml, p = 0.04) と輸血量(2280 vs. 3360 ml, p = 0.01)が多かった。D群ではICU入室時の中心静脈圧(9 vs. 12 mmHg, p = 0.01)や平均肺動脈圧(23 vs. 26 mmHg, p = 0.01) は有意に高く、カテコラミンの使用量と薬剤数も多かった。ICU入室後24時間の経過では、D群はtotal balanceが有意に多く(129 vs. 1396 ml, p = 0.01)、acidemiaとなった患者の割合が高かった(11 vs. 44%, p = 0.01)。多変量解析では手術時間(odds比 1.014, p = 0.001)と術後24時間のtotal balance(odds比 1.001, p = 0.01)が72時間以上の長期人工呼吸管理に関連していた。患者予後として抜管後48時間以内の再挿管や補助呼吸の使用には両群で有意差はなかったが気管切開施行率はD群で高かった(3 vs. 48%, p<0.001)。D群ではICU在室日数(4 vs. 18日, p<0.001)と入院日数(26 vs. 55日, p<0.001)が長く30日死亡率(0 vs. 17 % , p = 0.02)と院内死亡率(0 vs. 17%, p = 0.02)は有意に高かった。[結論]維持透析患者の心臓血管手術後において術後72時間を越えて人工呼吸が必要であった患者は、術前の手術リスクが高い傾向にあり患者予後も悪かった。長期人工呼吸管理のリスク因子として関連があったのは、手術時間と術後24時間のtotal balanceであった。