[O83-6] 多発肋骨骨折の当院での呼吸管理について~肋骨固定術の効果は?~
【背景】多発肋骨骨折は外傷患者の約10%に発生する。多くがflail chest(FC)を伴って呼吸管理を必要とし、肋骨固定術を行うこともある。FCを伴う多発肋骨骨折の治療法に関しては2012年に EAST guideline(J trauma 2012)が発表され、2017年にはmeta解析としてOperative Treatment of Rib Fractures in Flail Chest Injuries: A Meta-analysis and Cost-Effectiveness Analysis.が発表された。当院でも肋骨固定術を行うことが増えてきたが、効果については詳しく検討されていない。【目的】当院ICUに入室した重症多発肋骨骨折患者の現状を把握し、肋骨固定術の効果について検討する。【方法】当院における多発肋骨骨折患者の呼吸管理(特に肋骨固定術の有用性)についてretrospectiveに検討した。対象は2014-17年にICUにて人工呼吸管理を行った多発肋骨骨折患者24名とした。除外基準は重症脳損傷(GCS<8)の合併、頚髄損傷の合併。主要評価項目を呼吸管理日数とICU入室期間とし、その他に年齢、性別、入院前のADL、肋骨骨折の程度、P/F比の推移、血気胸の有無、肺実質障害の合併(肺挫傷、肺炎、喘息など)、カテコラミン使用の有無、3日間/7日間の水分バランスの合計、気切の有無、鎮痛方法、手術方法を検討した。【結果】FCを呈したのは12名、うち肋骨固定術を行ったのは4名だった。患者背景に有意差はみられなかった。固定術の有無で呼吸管理日数やICU入室期間に差はなかった。固定術を施行した群では、肺実質傷害(肺挫傷、誤嚥性肺炎、喘息、COPD、VAP)のない症例で呼吸管理日数やICU入室期間が短かい傾向であった。FC群のうち肺実質傷害のない群では固定術を施行した患者で呼吸管理日数やICU入室期間が短い傾向があった。肺実質傷害のある群では呼吸管理日数やICU入室期間はむしろ固定術を施行した群が長い傾向があった。【結論】肺実質傷害のない患者では肋骨固定術の施行により呼吸管理日数が短縮できる可能性がある。肺実質傷害がある患者では肋骨固定術を行っても呼吸管理日数は変わらない可能性がある。肋骨固定術の適応については更に検討する必要がある。