第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 症例

[O86] 一般演題・口演86
呼吸 症例05

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:大藤 純(徳島大学病院 救急集中治療部)

[O86-2] 重篤な低酸素血症を呈した急性間質性肺炎に対し、PMX-DHP・ECMOで加療し救命し得た一例

児玉 健士, 濱崎 順一郎, 上野 剛, 下野 謙慎, 杉本 龍史, 松窪 将平, 梅田 幸希 (鹿児島市立病院)

【はじめに】急性間質性肺炎(AIP)は、誘因なく発症し急速進行性の経過をたどる、死亡率が40%以上にも上り、非常に生命予後の悪い疾患である。確立した治療法もなく、治療に難渋することが多い。今回我々は、重度の低酸素血症を来したAIP に対して、ステロイドパルス療法に加え、PMX-DHP、Extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)を使用した集学的全身管理を行い、救命し得た症例を経験したので報告する。【症例】61歳男性。前医で右化膿性股関節炎のため掻把術を施行された。その後、胃潰瘍から大量出血をきたし、止血、輸血等の加療中に、低酸素血症が増悪し呼吸不全となったため当院へ緊急搬送された。集中治療室入室後に、重度の低酸素血症のため、挿管人工呼吸管理とした。前医では、Transfusion-related acute lung injury(TRALI)やAcute Respiratory Distress Syndrome(ARDS)が疑われていたが、臨床経過や胸部CTからAIPを強く疑い、即日、PMX-DHP及びステロイドパルス療法を施行した。酸素化不良の状態が継続していたが、来院3日目に冠動脈攣縮によるものと思われる心室細動を発症し、除細動で洞調律に復帰したが、循環動態維持困難であったため、V-A ECMOを導入とした。翌日、循環動態の安定に伴い、V-V ECMOへと移行した。来院9日目にステロイドパルス療法2クール目を施行した。徐々に酸素化能の改善を認め、来院15日目にECMOを離脱し、18日目には気管チューブを抜管とした。その後も、酸素療法は継続中であるが、臨床症状は増悪することなく、画像上も、明らかな改善を認めている。【まとめ】AIPは急激な経過を辿り、致死率も高く、治療も比較的長期となる。本症例は循環動態維持目的でのV-A ECMOの導入であったが、結果的に、V-V ECMOへと移行し、酸素化能が維持出来ることで、患者肺実質への負担を軽減し、拡散障害の改善を得るまで、治療継続が可能であった。また、ステロイドパルス療法と共に行った、早期に施行したPMX-DHPも間質病変の増悪進行を妨げる何らかの効果があったものと思われ、致死率の高い本疾患においては、早期導入を考慮すべき、救命の一助となる可能性がある。