[O89-2] Intra-aortic balloon pumping (IABP)留置中に腹腔動脈と上腸間膜動脈に血栓を認めた一例
【背景】Intra-aortic balloon pumping (IABP)留置中の血栓症や塞栓症は、注意すべき合併症として、認識されている。そのため、IABP留置中に血栓形成を予防するためにヘパリン持続点滴が行われている施設が多いと思われる。しかし、ヘパリンコーティングされたものであれば、ヘパリン投与は不要とする報告もある。また、IABP留置中に発生した合併症の頻度等はいくつか報告されている。その中でも日本の多施設共同研究において、2803例中3例で腸管虚血を認めたとされる。以上より、腸管虚血自体の頻度は低く、腹腔動脈と上腸間膜動脈に同時に血栓を認める例は更に少ないと推測される。【臨床経過】症例は81歳、男性。受診3日前からの呼吸苦と胸痛を主訴に前医を受診。当院へ紹介受診したが、ショックバイタルを呈し、酸素化は非常に不良であった。亜急性心筋梗塞に伴う急性心不全と診断され、大動脈バルーンパンピング(IABP)を挿入の上、経皮的冠動脈形成術が施行された。しかし、カテコラミン使用下でも血行動態の維持は困難であり、挿管下でもP/F ratio 100未満であったため、補助循環装置(PCPS)を挿入し、集中治療室へ入室となった。その後は薬物加療を行いつつ、PCPSのweaningを行い、入院3日目にPCPSは離脱した。PCPS離脱後も血行動態は保たれていたが、入院5日目に乳酸値の上昇を認めた。造影CTを施行したところ、腹腔動脈や上腸間膜動脈に血栓を認め、腸管虚血による乳酸値上昇と考えられた。IABPの抜去、抗凝固療法の強化を行うも状態は改善せず、同日に永眠となった。【結論】IABP留置中の合併症としては比較的稀な血栓症ではあるが、起こりうる合併症として、念頭に置く必要がある。また、このような合併症に備えて、適切な対応を検討しておく必要がある。