第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 症例

[O89] 一般演題・口演89
循環 症例04

2019年3月2日(土) 16:50 〜 17:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:澤野 宏隆(大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター)

[O89-3] 手術中の制御困難な出血性ショックに対して大動脈閉塞バルーンカテーテルの挿入が有用であった2例

大竹 晶子1, 遠藤 武尊1,2, 清水 智子1,2, 金澤 綾子1, 内田 貴之1, 荒井 秀明1, 原山 信也1, 二瓶 俊一1, 相原 啓二1, 蒲地 正幸1 (1.産業医科大学病院 集中治療部, 2.産業医科大学病院 麻酔科学講座)

【背景】出血性ショックに対する大動脈閉塞バルーンカテーテル(IABO)留置は、救急集中治療領域においては一般的な戦術となりつつある。一方、麻酔科学会の「危機的出血のガイドライン」にIABOの記載はなく、手術麻酔領域でのIABO使用の報告は多くない。今回、手術中の制御困難な出血性ショックに対して、IABO挿入が有用であった2症例を経験したので報告する。
【症例1】70歳台女性。尿路結石に対して腎瘻造設術と破砕術を施行された。術野からの出血は少量であったが、抜管後より離脱困難なショック状態となった。貧血も認め出血性ショックが想定されたが、出血源が明らかでなく術野よりの止血は不能であった。ICU医師応援要請となり、後腹膜への出血を考えIABO留置したところ血圧上昇を認め、造影CT検査へ移動。患側腎より造影剤の血管外漏出像と巨大後腹膜血腫を認め、緊急動脈塞栓術を施行となった。
【症例2】60歳台女性。左変形性股関節症に対して人工関節置換術を施行された。スクリューを留置の際に深い刺入となってしまった。術野で刺入部位からの出血は少量であったが、その後、離脱困難なショック状態となった。脈拍触知不能となりICU医師応援要請。骨盤腔内への出血と判断しIABOを挿入したところ、血圧上昇を得られ緊急動脈塞栓術へと移行できた。
【考察】自験例では、1.予期しにくい出血、2.術野外への出血により出血量の把握が困難、3.術野から止血コントロールが不可能、という共通点から危機的出血に至ったと考えられた。IABO留置により循環動態の安定化を得たことで、安全に動脈塞栓術を施行することができた。緊急でのIABO挿入は、カテーテル迷入や位置異常による臓器障害などの合併症のリスクを伴う。しかし、手術室では透視機器を速やかに準備でき、緊急であっても透視下に比較的安全にIABOを留置することができた。
【結語】手術中の出血性ショックで術野からの止血が困難な場合、治療戦術の一つにIABO留置を考慮する価値がある。