第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

循環 症例

[O89] 一般演題・口演89
循環 症例04

Sat. Mar 2, 2019 4:50 PM - 5:50 PM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:澤野 宏隆(大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター)

[O89-4] 左主幹部急性心筋梗塞による心停止に循環補助を施行し多種合併症を認めるも独歩転院し得た1例

森内 麻美1, 吉田 徹1, 岩井 俊介1, 長岡 可楠子1, 吉田 稔1, 桝井 良裕1, 桑田 真吾2, 松田 央郎2, 藤谷 茂樹3, 平 泰彦3 (1.聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院 救命救急センター, 2.聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院 循環器内科, 3.聖マリアンナ医科大学 救急医学)

【背景】左主幹部急性心筋梗塞(LMT-AMI)は重症病態で、経皮的心肺補助(PCPS)導入例でも死亡率は50%近いとされる。PCI・冠動脈ステント留置は血栓防止にDAPTが必要だが、抗凝固療法併用はさらに合併症の可能性を上げ、状況により致命的となる。【臨床経過】77歳、男性。歩行中の胸部圧迫感の後、ショック状態となり当院へ救急搬送された。来院時極度に左室機能低下、カニュレーション開始直後に心停止し心肺蘇生開始、PCPS駆動までのdown timeは14分だった。冠動脈造影でLMT99%狭窄、PCI・ステント留置し、IABP挿入しICU収容した。DAPTに加えPCPSで抗凝固療法を必要としたが、PCI前後のCTで胸部大動脈瘤・壁在血栓、腹部大動脈解離を認め、高リスク状況であった。PCPSカニューレ刺入部からの出血や胸骨圧迫に起因する右大量血胸を認め、大量輸血や慎重な抗凝固の調節、胸腔ドレーン挿入や右内胸動脈塞栓術を必要とした。菌血症も合併し、第7病日にPCPS・抗凝固療法離脱したが、小脳梗塞・脾梗塞が判明し、PCPS・IABPでの大動脈瘤壁在血栓塞栓化の可能性が考えられた。これにDAPT継続で対応、深部静脈血栓も認められ抗凝固療法の再開を余儀なくされた。この後小脳出血が出現し、DAPTと抗凝固の中止が勧告されたが、致死的ステント血栓症の可能性もあり、熟慮の末アスピリン+弱めの抗凝固での管理方針とした。幸いにも小脳出血の増悪は認めなかった。その他多彩な合併症(声帯麻痺、うっ血性心不全等)を併発したが、集中治療管理継続し第48病日に一般床転棟、嚥下リハ目的に第63病日に独歩転院となった。【結論】LMT-AMIで心停止という重症病態に補助循環及びステント留置を中心に加療し、独歩転院した症例を経験した。ステント初期の知見で、AMIに対するステントに後療法としてアスピリン+抗凝固療法では6~21%がステント血栓で再閉塞し、LMTでは致命的と考えられる。本症例では、出血・塞栓が生じやすい母地に補助循環の必要性・多様な合併症が時期を違えて発生し、リスクやLMT留置のステントを考慮した最適な抗血小板・抗凝固療法の変更・切替に加え、動脈塞栓術の適用など、粘り強い集中治療管理を必要とした。侵襲的循環管理での合併症予防・対策について非常に教訓的で示唆に富む症例と考えられたので報告する。