第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

循環 症例

[O90] 一般演題・口演90
循環 症例05

Sat. Mar 2, 2019 5:50 PM - 6:40 PM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:徳山 榮男(かわぐち心臓呼吸器病院)

[O90-1] 自殺企図で精神科入院中に右房内血栓を伴う肺塞栓症を呈し、抗凝固療法のみで治療可能だった一例

澁谷 淳介1, 木村 慶1, 古瀬 領人1, 坪井 一平1, 川中 秀和1, 田尻 正治1, 小鹿野 道雄1, 田邊 潤1, 清水 渉2 (1.静岡医療センター, 2.日本医科大学付属病院)

[背景]右房内血栓を伴う肺塞栓症に対する治療法は、抗凝固療法、血栓溶解療法、または外科的摘出術の選択肢が挙げられるが、その適応基準に関して一定の見解が得られていない。[臨床経過]症例は79歳の女性。近医に認知症で通院していたが、2018年6月から幻視、幻聴が強くなり、6月23日カッターで自身の腕を切るなど自殺企図が生じ、翌日には切腹を試みたため精神科入院となった。7月2日に頻呼吸、SpO2の低下、左下腿浮腫を認め、肺塞栓症、深部静脈血栓症が疑われ7月3日当院へ転院となった。造影CTを行い両側肺動脈中枢から認める血栓と、左浅大腿静脈の血栓を認めた。また心臓超音波検査では右房内において血栓を認め、右室の拡大と右室負荷所見を認めた。また血液検査でBNPが604pg/dlと右室負荷所見を認め、高感度トロポニンIは2129pg/mlと心筋損傷があり、リスクの高いsubmassiveの肺塞栓症が考えられた。重症度の高い肺塞栓症に右房内血栓を伴っていたため、外科的摘出術や血栓溶解療法など侵襲的な治療も検討した。しかし患者は自殺企図で入院し精神的に不安定な状況であり、また高齢女性でADLが非常に低いことからも侵襲的な加療はリスクが高いと判断。抗凝固療法のみで経過をみる方針とした。第1病日、第2病日は尿量が400ml/日以下と乏尿であったが、フロセミド持続静注を開始し利尿良好となり、血圧も第3病日以降は上昇した。第7病日フォロー心臓超音波検査で右房内の血栓も消失し、造影CTでも肺塞栓症の増悪がないことが確認された。酸素投与からも離脱し、ヘパリンからアピキサバン内服へ変更可能となったため、第9病日、前医病院へ転院となった。[結論]今回、自殺企図を伴い精神科入院となり、高齢でADLも低い患者であったことから、抗凝固療法のみで治療を行ったが、良好な経過をたどり右房内血栓も消失した肺塞栓症の一例を経験したため報告した。