[O95-3] 敗血症患者の集中治療後の不安、抑うつとPTSDに関する調査
【背景】近年、ICUに入院した重症患者の集中治療後症候群(Post-Intensive Care Syndrome:PICS )が注目されている。この中で精神面では、不安や抑うつ、PTSDなどの問題が長期化することが報告されている。また、ICU入院中多くの患者が幻覚や幻聴、記憶の欠落などを体験し、ICU退室後にも影響を及ぼすと言われている。PICSは、敗血症患者においても重要な課題となっているが、長期的に抱える精神的な問題に関して本邦では報告が少ない現状がある。【目的】ICUに入院した敗血症患者の退院後の精神障害と入院中の経過、ICUでの記憶や体験について調査すること。【方法】単一施設における観察研究:2013年9月から2017年5月に敗血症(SSCG2012重症敗血症)の診断で、A病院高度救命救急センターICUに入院した患者を対象とした。入院後6ヶ月、12ヶ月の時点での精神障害の有無を調査するため、不安と抑うつの評価としてHospital Anxiety and Depression Scale (以下HADS) と、PTSDの評価として改訂版出来事インパクト尺度日本語版(Impact of Event Scale-Revised:以下IES-R)の質問紙調査を実施した。スコア得点から精神障害の有無を調査し、入院時あるいは入院中のデータ(性別、年齢、APACHEIIスコア、SOFAスコア、人工呼吸管理、せん妄の有無と日数、ICU滞在日数、リハビリテーションなど)を比較した。また、同時に半構造的面接法によるインタビュー調査を実施し、ICU入院中の記憶や体験について調査した。【結果】生存退院した敗血症患者84名中、入院後12ヶ月まで質問紙とインタビュー調査を実施できた患者は30名で、男性18名、女性12名だった。質問紙調査で不安、抑うつ、PTSDがあった患者(精神障害あり群)は、入院後6ヶ月は6名、入院後12ヶ月は2名だった。6ヶ月の精神障害あり群となし群で比較すると、入院時あるいは入院中の因子は両群で差がなかった。インタビュー調査では、6ヶ月の精神障害あり群6名中5名で、「ICUで恐怖感を伴う妄想的体験の記憶」があった。また、9割の患者で「ICU入院中の記憶が欠けている」が、それが退院後の生活に影響があると話した患者はいなかった。【結論】退院後に不安、抑うつ、PTSDの問題があった敗血症患者では、ICUで恐怖感を伴う妄想的体験の記憶があった。今回は症例数が少なく、入院中の経過との明確な関連性は調査できなかったが、今後症例を増やして調査しICU入院中からのケアを検討する必要がある。