第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O95] 一般演題・口演95
感染・敗血症 研究06

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:40 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:吹田 奈津子(日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療室)

[O95-5] ICUにおける手指衛生に関係する因子の検討-看護必要度との関連-

飯嶋 正子1,2, 横倉 千恵子1, 小池 正朗1, 石川 潮音1, 高橋 洋子1, 増田 孝広1, 石垣 裕美2, 西 奈緒2 (1.東京医科歯科大学医学部附属病院 集中治療部, 2.東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部)

【背景】現在看護業務量を適正に測定するツールとして、重症度、医療・看護必要度(以下必要度とする)があり、手指衛生と必要度に焦点を当てた研究においては、必要度が高くなると手指衛生の手技の質の低下につながることが明らかになっている。しかし、必要度の合計点数で検討しており詳細な要因は検討されていない。【目的】ICUにおける手指消毒薬消費量と、これに影響を与える因子として、ICU入室患者の看護必要度(各項目および合計)、Contact Precaution(CP)の実施の有無、使い捨て手袋の消費量などの関連項目を調査し、これら因子と該当期間における手指衛生遵守率との相関(関連)について検討した。【方法】2014年4月から2017年3月までICUに入室した10845名を対象とし、年齢、CP実施の有無、看護必要度と手指消毒薬使用量、処置用未滅菌手袋消費量を測定した。ICUにおける看護必要度では、A項目(モニタリングおよび処置)、B項目(患者の状況等:看護ケアにかかる内容)の2つの項目を評価した。測定された因子間の関連および手指衛生遵守率との関連を調べるとともに、手指消毒薬使用量を説明する因子を、多変量解析により調べた。【結果】A項目の合計点平均は5.68点(15点満点)、B項目の合計点平均は5.40点(11点満点)であった。また、CPが必要な患者の率は全体の12%であった。研究期間における手指消毒薬の消費量と手袋の消費枚数は、ICU全体で1日あたり平均605mlと829枚であった。看護必要度、および病棟におけるCP症例を説明変数として重回帰分析を行ったところ、手指消毒薬の消費に影響を与えた変数はCP症例(β=-.406、p=.01)とB項目の移乗(β=-.344、p=.03)であった。手袋の消費枚数に影響を与えた変数はB項目の移乗(β=-1.524、p<.01)、口腔清潔(β=.543、p<.01)、食事摂取(β=-.997、p<.01)、CP症例(β=-.362、p<.01)であった。【結語】ICUにおいて、口腔清潔全介助の症例では手袋の消費枚数が増加、食事摂取・移動の全介助とCP症例では手袋および手指消毒薬の消費量が減少するという結果が得られた。手指消毒薬の消費量と手袋の消費量は連動しておらず、一処置一手袋、手袋を変える毎の手指消毒の徹底がなされていない可能性が示唆された。今後はこれらの結果をもとに、手指衛生遵守率向上のための介入方法を模索していく。