第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

補助循環 症例

[O98] 一般演題・口演98
補助循環 症例03

Sat. Mar 2, 2019 4:10 PM - 5:00 PM 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:大平 順之(兵庫医科大学病院 臨床工学部)

[O98-1] ECPRで蘇生に成功し、VAV ECMOを経て長期ECMO管理を行った一例

村上 紗羅1, 小畠 久和2, 秋山 太助2, 河野 通彦2, 熊澤 淳史2 (1.堺市立総合医療センター 麻酔科, 2.堺市立総合医療センター 集中治療科)

背景:近年、通常の心肺蘇生(CPR)で蘇生しない心肺停止患者に対して、体外循環式心肺蘇生法(ECPR)が施行される場合がある。心停止の原因が解除され、循環動態が安定すれば、veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation (VA ECMO)からの離脱が考慮されるが、その際、肺の状態を考慮し、必要であればveno-venous(VV) ECMOの導入が考慮される。今回、ECPR後の管理において、venoarterial-venous(VAV) ECMOを経てVV ECMOへ移行した一例を報告する。症例:来院4日前からの胃腸炎症状で救急外来を受診した74歳男性。腎前性腎不全、高K血症を認め、心電図検査中に心室頻拍を認めた。通常のCPRに反応せず、ECPRを行った。心停止からECMO導入まで約21分であった。VA ECMOにより循環動態は安定化したが、著明な凝固能障害のため多量の輸血を要した。心停止後の両心不全に対し、持続的血液濾過透析を行った。以後心不全は改善傾向であり、VA ECMOからの離脱を考慮したが、自己心拍出量が正常下限程度であることと、心肺蘇生時の肺挫傷による喀血と著明な低酸素血症が問題となった。VV ECMOによる管理は可能と考えたが、低心拍出の懸念もあり、第7病日に右内頚静脈に送血管を追加してVAV ECMO管理とした。約24時間かけて大腿動脈への送血を漸減終了し、VV ECMOへ移行した。その後覚醒下にリハビリを継続し、徐々に喀血量減少を認め、入室21日目にVV ECMOを離脱、第24病日にICU退室、第37病日に人工呼吸器離脱、第59病日に退院となった。考察:VA ECMO下での治療経過中に心機能が改善傾向となれば、ECMOからの離脱を考慮するが、肺機能が不十分な場合は、VV ECMOへの移行が考慮される。一般に、VA ECMO下では循環動態が安定傾向であっても、離脱後の実際の循環動態を予測することは難しい。また、ECMO離脱後、循環動態を維持できない場合に再導入を行うことは容易でない。そこで、一時的にVAV ECMOの状態にすれば、循環動態を評価しながら動脈送血を漸減し、徐々にVV ECMOへ移行することができる。本症例では、大腿静脈の脱血管をY字管につなぎ、もう一台のECMOを介して右内頸静脈に送血するという手法を取った。これにより、容易に動静脈の送血流量を調整することが可能になり、容易にVV ECMOへ移行することができた。結語:ECPR後の低心機能、肺障害に対して、VAV ECMOを経由することでより安全にVV ECMOを移行できる可能性がある。