[O98-2] 経皮的補助循環施行中に発症した上大静脈症候群に対して近赤外線分光法モニターが有用であった1例
1.背景 経皮的補助循環(PCPS)施行中の心臓が拍出した血液とPCPSが送血した血液がぶつかり合うミキシングゾーンを認識することは、人工呼吸器やPCPS装置の酸素加設定の調整の指標として非常に重要である。我々は近赤外線分光法(NIRS)モニターを頭部及び両上下肢に装着し、持続モニタリングすることによってミキシングゾーンの決定の補助として利用している。今回、上大静脈症候群を推測し得る所見が得られNIRSモニターが診断に有用であった1例を経験したので報告する。2.臨床経過 71歳女性、胸部違和感を主訴に救急搬送され急性心筋梗塞と診断、大動脈バルーンパンピング(IABP)を挿入し緊急心臓カテーテル検査(CAG)を施行した。左冠動脈前下行枝に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行、途中血圧低下を認めたためPCPSを導入し、血栓吸引及び病変部にステントを留置し再潅流を確認して手技終了とした。ICU帰室後にNIRSモニターを装着した。モニタリング開始時の測定値(10分間平均値)は、右頭部63、左頭部63、右上肢77、左上肢72、右下肢69、左下肢70であり、この測定値をベースラインとした。ICU帰室8時間後から頭部の測定値の低下を認めたが、右橈骨動脈、IABP先端、PCPS人工肺の動脈血酸素分圧は同等値であり、右手の経皮的酸素飽和度も100%であった為に酸素化は問題ないと判断していた。ICU入室20時間後においても頭部の測定値の低下は持続しており、右頭部44、左頭部38、ベースラインからの変化は-29%、-39%となっていた。顔面浮腫の増強を認めたこともあり上大静脈圧を測定すると30mmHgであった。経胸壁心超音波検査にて全周性の心嚢液貯留があり、高度な心タンポナーデの状態であった。心嚢液ドレナージにて上大静脈圧は16mmHgに低下し、NIRSモニターも右頭部55、左頭部46と上昇し、顔面浮腫も改善した。心嚢ドレナージ以降はNIRSモニターの頭部の測定値の持続的な低下は見られず、PCPSは開始4日後に離脱することができた。3.結論 NIRSモニターは非侵襲的に組織に対する酸素化の状態を持続的にモニタリングすることができ、PCPS施行中においても有用なモニターであると考えられた。