[P1-2] 膵十二指腸動脈瘤破裂により2度の心肺停止に至るも、集学的治療にて救命しえた一例
【背景】膵十二指腸動脈瘤は腹部内臓動脈瘤全体の1.6%と報告されており、比較的稀な疾患とされている。この度、致死的な経過を辿った膵十二指腸動脈瘤破裂に対して、外科的介入を含めた集学的治療を行い救命しえた症例を経験したので報告する。【臨床経過】40歳男性。来院当日に突然の上腹部痛を自覚し、当院を受診した。血液検査では膵酵素の上昇を認めなかったものの、大量飲酒のエピソードとCTでの膵周囲の脂肪織濃度上昇から急性膵炎が疑われ、補液による加療が行われた。第2病日早朝より徐々に循環動態が悪化し、改めて来院時のCTを確認すると後腹膜の出血を疑う高度の脂肪織濃度上昇および血性腹水を認め、後腹膜血腫の腹腔内穿破が疑われ、緊急動脈塞栓術の方針となった。手技の直前で心肺停止となり、13分間の心肺蘇生と大量輸血・IABO挿入を行い心拍は再開した。血管造影にて膵十二指腸動脈より造影剤の血管外漏出像を認め、動脈塞栓術にて止血を得た。しかし、その後も循環動態は改善せず、再び心肺停止となり、2分間の心肺蘇生を行い心拍は再開した。膀胱内圧の上昇を認め、腹部コンパートメント症候群が疑われたため、緊急開腹血腫除去術を施行した。術中所見では、大量の血性腹水と後腹膜血腫を認めたが、動脈瘤からの止血は得られていた。腹水と血腫を除去し、開腹のまま手術終了とし、集中治療室にて集学的治療を行った。徐々に全身状態は改善したため、第4病日に閉腹術を施行、第12病日に集中治療室を退室し、第28病日にCPC1にて自宅退院となった。【結論】膵十二指腸動脈瘤の成因には、急性膵炎、外傷、動脈硬化、正中弓状靭帯症候群、segmental arterial mediolysis(SAM)などがあるが、本症例は血管造影所見と手術所見からSAMによるものと考えられた。動脈瘤の破裂は約45%に起こるとされ、一部は致死的な経過を辿るため、早期診断・治療が重要である。診断には、dynamic CT動脈相での造影効果、血管造影での血管外漏出像が有用であり、治療の際は大量出血による循環血液量減少性ショックに対する介入に加え、続発する腹部コンパートメント症候群の発症にも注意する必要がある。