第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

血液・凝固 症例

[P10] 一般演題・ポスター10
血液・凝固 症例01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:40 AM ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:巽 博臣(札幌医科大学医学部集中治療医学)

[P10-2] 急性肺血栓塞栓症の発症を機に先天性プロテインS欠損症と診断された1症例

大高 麻衣子1, 金本 匡史1, 竹前 彰人1, 杉峰 里美1, 松岡 宏晃1, 戸部 賢1, 麻生 知寿2, 高澤 知規2, 日野原 宏2, 齋藤 繁2 (1.群馬大学医学部附属病院 集中治療部, 2.群馬大学大学院医学系研究科 麻酔神経学)

今回急性肺血栓塞栓症の発症を機に,先天性プロテインS欠損症と診断された症例を経験したので報告する.【背景】先天性プロテインS欠損症は日本人の三大先天性血栓性素因の一つである.常染色体優性遺伝病であり,日本人の変異ヘテロ保因者は1.8%という報告がある.先天性凝固異常症は成人まで無症状で経過する例も多く,その診断は比較的困難であると考えられる.【臨床経過】50歳代男性.平成30年〇月〇日午前6時20分頃,自宅リビングで意識レベル低下し,いびき様呼吸となったため,家族が救急要請.救急車にて当院救急外来受診した.受診後外来にて心肺停止状態となり胸骨圧迫行いながらVA-ECMO導入となった.造影CTにて肺動脈に多発血栓があり,重症肺血栓塞栓症の診断でICU入室となった.ICU入室後ヘパリンによる抗凝固療法を開始した.経胸壁エコー上心尖部の壁運動が保たれたまま右室自由壁運動が阻害される,いわゆるMcConnell徴候を認め,収縮期にも左室はD-shapeで右心負荷が示唆された.いずれも急性肺血栓塞栓症に矛盾しない所見であった.左室収縮能もEF20-25%程度と高度に低下しており,IABPを挿入した.翌日,尿量が低下したためCHDFを導入し開始した.ICU入室4日目,心収縮能改善認めたため,VA-ECMOからVV-ECMOへ回路変更し、入室9日目には呼吸状態改善傾向であり,かつ後腹膜血腫による血圧低下が疑われたためVV-ECMOを離脱した.離脱後も酸素化は良好であった.入室19日目,肝酵素の著名な上昇を認めたため,造影CT撮影したところ,肝梗塞と肝被膜下出血と診断された.経過観察で侵襲的な処置は必要としなかった.入室25日目,意識レベル改善を確認し抜管、CHDFも離脱し,以降隔日でHDを行った.抗凝固薬はヘパリンからワーファリンの内服へ切り替えを行い,入室33日目,ICUを退室した.その後はリハビリを行い徐々にADL改善,歩行器歩行可能なまで回復した.ICU退室から1か月半後,独歩退院となった.【結論】急性発症の肺血栓塞栓症の患者の中には先天性凝固異常症を有している者が存在する.遺伝疾患であるため,診断することは,発症した患者だけでなく,その家族にとっても有益だと考えられる.