[P10-3] 後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対し血漿交換を行うも治療に難渋した一例
【背景】後天性TTPの生命予後はその病態解明により劇的に改善しているが、治療難渋例や再発例がある。後天性 TTPに対して早期診断を行うも治療に難渋した一例を経験したので報告する。【臨床経過】関節リウマチに対してプレドニン10mg /日、 サラゾスルファピリジン加療中の72歳女性。来院4日前下腿紫斑出現し、3日前悪心、嘔吐、食事摂取低下。2日前意識障害で家族が救急要請、搬送となる。来院時JCS1体温37.1℃、脈拍102回/分、血圧126/80、SpO2 94%(室内気)、瞳孔両側3mm、対光反射あり、両下腿紫斑多数。WBC 10090/μL、Hb 8.8g/dL、Plt 5.0万/μLと減少、LD1344mg/L、ハプトグロビン>10mg /dL、破砕赤血球あり溶血性貧血所見。Cr1.23mg/dl,BUN44.7mg/dlと腎障害。頭部CT検査で右前頭葉、側頭葉、小脳に低吸収域散在を認め脳梗塞が疑われた。以上よりTTPかHUSに伴う脳梗塞を疑いICUへ入院。同日血漿交換を開始、入院翌日提出したADAMTS13活性0.7%、ADAMTS 13Inh定量0.9IU /mlが陽性でTTPと診断し血漿交換4日間施行しHb9.2g/dL、Plt13.4万μ/L、LD 286 mg/dLと改善。第5病日上気道狭窄の呼吸不全で気管挿管、Hb8.7g/dL、Plt1.5万μ/L、LD1580 mg/dL、破砕赤血球陽性で、TTP再燃を疑い血漿交換再開。第6病日カテーテル感染症で発熱、腎機能障害、尿量減少に対しメロペネム2g/日、バンコマイシン1g/日、CHDF開始、第12病日よりHDFへ変更し第18病日Cr0.76mg/dl、BUN31.5mg/dl、尿量1800ml/日で離脱。血漿交換は第11病日まで継続し、更に週2回継続した結果、Plt6.6万μ/L、LD372mg/dlと改善。第26病日Hb8.9 g/dl、Plt 18.5μ/L、LD322mg /dl、ADAMTS 13活性 3.4%、ADAMTS 13Inh定量陰性化し第28病日意識清明、P/F raito346で抜管。第32病日プレドニン30mg/日へ減量、第55病日リウマチ内科転科。【結論】原因不明の血小板減少と破砕赤血球を伴う溶血性貧血、脳梗塞、ADAMTS13活性の低下より後天性TTPの診断となった。後天性TTPの標準治療は血漿交換療法であり、治療開始後3~5日間は連日行い血小板数、ヘモグロビン、LDHを指標に病勢を評価し隔日施行へ延長することが推奨されている。本症例も早期に血漿交換を導入したが、一度中断したことによる再燃疑われ再導入し治療に難渋した。後天性TTPの血漿交換療法はADAMTS13活性上昇、ADAMTS13Inhの陰性を確認するまで治療継続が重要であり、治療期間について今後更に検討されるべきと考える。