第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(ポスター発表)

血液・凝固 症例

[P10] 一般演題・ポスター10
血液・凝固 症例01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:40 AM ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:巽 博臣(札幌医科大学医学部集中治療医学)

[P10-4] 急速に進行する四肢紫斑を契機に診断された二次性血栓性微小血管症の一例

峯岸 聖月, 松田 律史, 丸藤 哲, 瀧 健治 (札幌東徳洲会病院 救急センター)

背景:血栓性微小血管症(TMA)は細血管に血小板血栓を生じ、破壊性血小板減少と溶血性貧血、腎障害や精神神経障害などの臓器障害を呈する疾患群である。血栓性血小板減少性紫斑病や溶血性尿毒症症候群はTMAの代表的な疾患であるが、この他に自己免疫疾患などに伴って発症する二次性TMAがある。急速に進行する四肢の紫斑を契機に診断し、早期の治療導入に成功した二次性TMAの1例を経験したので報告する。症例:特記すべき既往のない80歳代女性、来院3日前から難聴を自覚し、体動困難となった。搬送同日、家族に発見され、救急搬送された。来院時、全身状態安定も右側腹部圧痛あり、炎症反応上昇と胆嚢腫大を伴わない右腹膜肥厚と周囲脂肪織濃度上昇を認めたため、右限局性腹膜炎の暫定診断で抗菌薬投与の上で経過観察入院の方針とした。第3病日、四肢に対称性の紫斑を認め、著明な凝固障害と血小板減少症が腎機能障害を伴って出現した。入院時の各種培養は陰性であり、全身状態が比較的安定していたため、敗血症としては非典型的と考え、対症的に凝固障害への治療を行いつつ、各種自己抗体を提出した上でステロイドセミパルス療法を施行した。最終的にMPO-ANCA強陽性、抗セントロメア抗体高値、ADAMTS13活性著減が確認され、凝固障害是正後に施行した腎生検結果は糸球体に血栓沈着と一部半月体形成病変を認めた。ANCA関連血管炎や強皮症などに続発した二次性TMAと診断し、第10病日に膠原病専門医を擁する市内の専門施設に転院とした。考察:本邦では2015年に「非典型溶血性尿毒症症候群診療改定ガイドライン」が制定され、TMAの診療は以前に比して取り組みやすいものとなった。しかしながら、二次性TMA については特異的検査法がなく、また治療開始に際して診断確定を待ち得ない事から実際の診療は極めて難解であると言える。今回、我々は既知の基礎疾患のない高齢者に臓器障害を伴って発症した急速進行性の紫斑病に対して、比較的早期に介入を行うことに成功した。早期に複数の自己抗体陽性を確認できたことが診断と治療に貢献したものと思われた。結語:急速に進行する四肢紫斑において、感染症だけでなく自己免疫疾患の可能性についても評価を行い、適切な治療計画を企図することが重要だと考えられた。