第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

血液・凝固 症例

[P10] 一般演題・ポスター10
血液・凝固 症例01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:40 AM ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:巽 博臣(札幌医科大学医学部集中治療医学)

[P10-5] 当院ICUで経験したTAFRO症候群の2症例

岩坂 翔, 賣豆紀 智美, 市村 研三, 西原 正章, 長尾 吉泰, 生野 雄二, 賀来 典之, 牧 盾, 徳田 賢太郎, 赤星 朋比古 (九州大学病院 救命救急センター)

【背景】TAFRO症候群は2010年に本邦から高井らによって報告された全身性の炎症性疾患である。T hrombocytopenia(血小板減少)、A nasarca(全身浮腫、胸腹水)、F ever(発熱)、R eticulin fibrosis(骨髄線維化)、O rganomegaly(臓器腫大:肝脾腫、リンパ節腫大)を五徴とする。稀な疾患であるが、血液疾患、膠原病、感染症では類似の病態を呈する事があり診断は容易ではない。適切な治療を行わないと急速に進行し生命予後が不良であるため、本疾患を疑い検査を行う必要がある。
【症例1】56歳女性。入院4年前に多発性骨髄腫のため末梢血幹細胞移植を施行した。数日間続く発熱、倦怠感のため入院精査を行うも各種培養は陰性であった。抗菌薬を開始したが熱型の改善なく、胸腹水の貯留を認めた。17病日に腋窩リンパ節生検を施行し、Castleman病に類似した所見を認め、臨床所見と合わせてTAFRO症候群と診断した。23病日よりステロイドパルス療法を開始したが、症状の改善なくシクロスポリン、トシリズマブも併用した。その後一時的に症状の改善を認めたが再増悪し109病日に亡くなった。
【症例2】49歳女性。急性腎障害、胸腹水貯留の精査のために入院した。敗血症を疑い治療開始したが、症状の改善なく腫大リンパ節の生検を施行した。各種培養結果は陰性で感染症は否定的であり、臨床症状からTAFRO症候群として11病日にトシリズマブを投与した。更に13病日からステロイド、シクロスポリンを併用したところ、徐々に胸腹水貯留は改善を認めた。最終的に維持透析も不要となり、71病日に退院した。
【考察】TAFRO症候群は新しい疾患概念であるため、まだ認知が不十分である。治療の遅れが致命的となるため、診断基準を参考に感染症・悪性腫瘍の除外をしつつ早期から鑑別疾患に挙げ検査を行う必要がある。我々が経験した2症例は急性な胸腹水の貯留による呼吸不全に対しては人工呼吸管理、急性腎障害に対しては持続的腎代替療法を要した。本症候群は、ICUで集学的治療を必要とする事が予想されるため、現時点で得られている知見を加え報告する。