[P100-6] 緊張病による嚥下障害に対して修正型電気けいれん療法が有効であった1症例
【背景】緊張病はカタレプシー、拒絶症、無言症、反響症状などを特徴とする疾患で、ときに咽頭筋障害による嚥下障害を来たす。精神科領域では知られている病態ではあるが、集中治療分野ではあまり報告がない。今回、緊張病による嚥下障害により人工呼吸器離脱困難となった症例に対して、修正電気けいれん療法が有効であった症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は48歳男性。統合失調症で前医精神科に入院中に、病棟で倒れているところを発見されて当院に搬送された。来院時、意識障害(GCS E1V2M3)、痙攣、舌根沈下があったため気管挿管、人工呼吸管理を開始した。来院時の採血でNa+ 103mEq/Lと低値であり、低ナトリウム血症による痙攣、意識障害と考え、ナトリウムの補正と水分調節を開始した。入院2日目には40℃の発熱とCK上昇、筋強直が出現したため、悪性症候群の併発を疑って、ダントリウムの投与を開始した。しかし、筋強直の症状は消失しなかった。入院4日目にNa+ 130mEq/Lまで上昇し、従命可能な状態まで意識が改善したため抜管を行ったが、嚥下障害のため再挿管となった。その後、発作性に頻脈・血圧上昇を伴う筋硬直、無動が出現した。ミダゾラムの静脈内投与にて筋硬直、無動は改善したことから、悪性症候群よりも緊張病が病態の主座と考えられた。嚥下障害も緊張病による症状と考えられた。入院6日目よりミダゾラムの持続静脈内投与を開始したところ、筋強直は改善が得られたものの嚥下障害は十分な改善が得られなかった。そのため、入院9日目、11日目、13日目に修正型電気けいれん療法を行ったところ、嚥下機能は著明に改善していき、入院13日目に抜管することができた。抜管後、嚥下機能は問題なく経過し、入院14日目に前医に転院となった。【結論】筋強直、無動を伴う意識障害の患者では、緊張病も鑑別に入れて治療にあたる必要がある。また、緊張病による嚥下障害には、修正型電気けいれん療法も有効であると考えられた。