[P11-2] 平成28年度版特定集中治療室用重症度改訂による循環器系患者の入室減少は虚血性心疾患に多かった
【背景】平成28年4月に特定集中治療室用の重症度・看護必要度が改定されたが、平成30年4月には改訂が行われなかった。【目的】平成28年改定では、観血的血圧測定、人工呼吸管理、輸血管理、体外循環などの特殊な治療法に2点が与えられたため、循環器系患者管理に対する評価に重きを置いた変更とも取れたが、実際は他科と比較し、循環器系患者の入室減少が起きたことを第45回集中治療医学会学術集会で我々は報告した。そこで我々は、同時期の循環器系患者の重症度から疾患の偏りがあるか、制度による影響の程度を評価した。【対象と方法】平成29年1月から6月までに、当院の重症系管理病床であるICU、救急系HCU に入床した循環器科患者を対象とし、入院時主病名と、重症度を調べ分類した。【結果】平成29年上半期のICU入床者数は362名で、循環器科の患者は82名であった。一方、救急系HCUの入床患者は、総数319名で、循環器科は171名を占めた。二つの重症系管理病床に入床した患者を疾患ごとに比較すると、虚血性心疾患94名(ICU23名、HCU71名)、急性心不全77名(ICU23名、HCU54名) 不整脈21名(ICU6名、HCU15名)、その他61名(ICU31名、HCU30名)と、患者数の多い疾患群では軒並みHCUへの入室が多かった。さらに、HCUに入床した循環器患者171名のうち、管理料1または2を満たす重症度4点以上の患者は83名であったが、旧制度で再評価すると102名が重症度3点以上で管理料1または2を満たしていた。特に、HCUに入床した虚血性心疾患の患者71名中では、新制度下で43名が重症度を満たしていたが、旧制度では53名と10名14.1%の差になり、疾患群の中では一番大きな差があった。【結論】昨年の集中治療医学会学術集会で発表したように、循環器科以外の診療科では重症度変更の影響をほとんど受けなかったが、平成28年4月に改訂された特定集中治療室用重症度は、循環器科患者にとって重症度を満たしにくい基準となり、虚血性心疾患患者では15%近くがICUからHCUへの入床変更を受けていた。この影響は今後も続くことが予想される。