第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P15] 一般演題・ポスター15
呼吸 症例03

2019年3月1日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場15 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:菅原 陽(横浜市立大学附属病院集中治療部)

[P15-2] 胸腺腫摘出術後に急性劇症型重症筋無力症となり集中治療を要した症例

中村 緑, 石井 久成 (天理よろづ相談所病院 麻酔科)

【はじめに】胸腺腫摘出術を受けた患者が、術後に MG を発症することがある。今回、胸腺腫摘出術後に MG クリーゼとなった症例を報告する。
【症例】62 歳女性、身長160 cm、53 kg。6 か前から体重減少、咳、左胸痛があり、CT で左胸腔に長径14 cm の腫瘤を認めた。腫瘍は前縦隔から左心膜を覆うように広汎に広がっており手術となった。術前の採血で抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体 17.0 nmol/l と軽度上昇、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ抗体陰性であり、眼瞼下垂、筋力低下等の本人の自覚症状もなく、重症筋無力症の合併はなかった。
【麻酔経過】麻酔はレミフェンタニル、プロポフォール、ロクロニウムで導入し、デスフルラン、レミフェンタニル、ロクロニウムで維持した。左用ポーテックス・ブルーライン気管支内チューブ(35Fr)を挿管し分離肺換気とした。右側臥位、左開胸で手術開始した。腫瘍が左上葉と剥離困難で、腫瘍と左上葉を一塊として摘出し手術終了となった。手術時間336分、麻酔時間424分、分離肺換気時間635分、尿量270ml、出血量755ml、総輸液量3950mlであった。
【術後経過】経過良好で術後7日目に退院した。術後 27 日後に労作時呼吸苦を主訴に外来を受診したが、問題ないとされ帰宅となった。術後 29 日後に自宅で転倒され、口に力が入らず流涎し、目の焦点が合わず、多汗、頻呼吸がみられ救急搬送された。4 L 酸素投与下の血液ガスでPaO2 152.3 mmHg、PaCO2 115.2 mmHgと2型呼吸不全を認め、MGクリーゼと診断され入院となった。
【入院後経過】気管挿管し血漿交換を連日繰り返した。抗 AchR 抗体は、110.0 nmol/lと上昇していたが、眼瞼の易疲労性試験陰性であった。入院 8 日目に眼瞼の易疲労性試験陽性となった。入院 9 日目に気管切開、入院 11 日目にステロイド内服を開始した。入院 13 日目に抗AchR 抗体は、1200.0 nmol/l とさらに上昇した。入院 13 日目にステロイドパルス療法、入院 21 日目に免疫グロブリン大量静注療法を開始した。呼吸リハビリテーションを行い呼吸状態改善傾向で、筋力低下も改善している。
【考察】胸腺腫術後に MG クリーゼとなった症例を経験した。急性に全身症状進行、呼吸困難、クリーゼを伴うことから、 Osserman 分類では 3 型で急性劇症型と言える。治療効果が乏しければ、拡大胸腺摘除術も検討される。
【結語】胸腺腫術後亜急性期の急性劇症型 MG に留意する。