[P15-5] 肺がん術後に気管支断端瘻から急性膿胸となり気道管理に難渋した一例
(背景)気管支断端瘻は肺切除術の合併症の一つであり感染を合併して膿胸をきたすと重篤となり治療に難渋する。今回我々は右肺癌術後膿胸において片肺換気による気道管理が有用であった一例を経験したので報告する。(症例)63歳男性、168cm、56kg。既往歴は6年前に急性心筋梗塞でPCI、同時期より糖尿病の内服加療。右肺癌に対し右肺上葉部分切除、中葉切除術を施行。術後軽度のエアリーク認めたが改善POD10に独歩軽快退院。翌日午後に突然の呼吸苦を訴え救急搬送、Room AirでSpO2は88%、CTにて右肺炎、胸水貯留。採血上WBC26900、CRP41.39と著明に上昇を認め重症肺炎でICU入室した。気管支鏡で右上葉気管支に痰の貯留、気管支断端に白苔付着を認め膿胸を疑いメロペネム、メトロニダゾール投与開始、胸腔ドレーン挿入。Nasal High Flowにて呼吸管理開始もPOD12に胸部レントゲン写真上左肺野への浸潤影進展を認め挿管人工呼吸管理開始。気管支鏡で右気管支より胸水の逆流を認め左肺への流入を防ぐため左片肺換気開始。以後呼吸状態改善傾向となるもPOD16に左肺野浸潤影の更なる拡大、たれ込みによる肺炎悪化を考え右胸腔開窓術を施行。術後シングルチューブに変更し人工呼吸器管理継続、呼吸器ウィーニング困難でありPOD25気管切開施行。気切後人工呼吸器離脱し呼吸循環動態安定しPOD32にICU退室。リハビリ継続していたがPOD50低酸素血症となりICU緊急入室、人工呼吸器管理開始、血液培養からKlebsiella pneumoniae検出され菌血症と診断、メロペネム、ミカファンギン投与開始。POD56換気不良の原因として右気管支瘻のリークを考え左片肺換気開始するための気切孔からのチューブ入れ替えの際痰と血餅による閉塞で換気不能から心停止、CPR施行。心拍再開、気道閉塞解除後左片肺換気開始。当初はpCO2貯留を認めていたが徐々に呼吸状態改善傾向。POD62にチューブ位置のずれ対策としてφcon社の先端にカフのあるラセン入り気管チューブに変更、リハビリ施行。感染も制御されPOD69に片肺換気終了し人工呼吸器離脱。POD73ICU退室しリハビリ継続。【結論】肺癌術後気管支瘻による膿胸患者において対側への炎症の波及を防ぐ事、気管支瘻への圧の回避は重要であり片肺換気はその有効な手段であるが体動等によりチューブ位置にずれを生じるため呼吸管理に難渋する。今回我々はより先端にカフのあるラセン入り気管チューブを用いることで気道の分離を確実に行い安全に気道管理を施行できた。