第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

循環 症例

[P16] 一般演題・ポスター16
循環 症例01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:清水 一好(岡山大学病院 麻酔科蘇生科)

[P16-4] 重度肺高血圧に伴う肺出血において肺血管拡張薬が肺出血を助長し治療に難渋した一症例

倉敷 達之1, 舩木 一美2, 北川 良憲2, 藤井 由衣1, 門永 萌1, 南 ゆかり3, 稲垣 喜三4 (1.鳥取大学 医学部 附属病院 手術部, 2.鳥取大学 医学部 附属病院 麻酔科, 3.鳥取大学 医学部 附属病院 高次集中治療部, 4.鳥取大学 医学部 器官制御外科学講座 麻酔・集中治療医学分野)

【背景】重度肺高血圧に伴う肺出血は重篤な病態である。一方、肺高血圧の治療において肺血管拡張薬は重要な薬剤であるが、潜在的に易出血性となる危険性がある。今回我々は、重度肺高血圧に伴う肺出血において、肺血管拡張薬が肺出血を助長し治療に難渋した症例を経験したので報告する。【臨床経過】31歳、男性。21 trisomyに心室中隔欠損症(VSD)を合併し、7歳時にVSD根治術を施行されたが、術後も肺高血圧が残存した。14歳時には肺動脈圧と体血圧が同圧に近いまでに肺高血圧が悪化した。VSD遺残短絡があるも、追加治療は行われずにフォローされていた。肺血管拡張薬として、プロスタサイクリン製剤を内服していたが効果は乏しかった。吐血のため、当院に緊急搬送され、喀血を疑い当院循環器内科に入院となった。入院後、喀血は落ち着いていたが、入院4日目の採血時に興奮し、大量喀血、高度の低酸素血症となり、気管挿管後、集中治療室(ICU)に入室した。その後、気管支動脈造影を行うも出血の責任血管は同定できず、重症肺高血圧による肺動脈からの出血と判断し、鎮静薬・鎮痛薬・筋弛緩薬の投与、止血薬(トラネキサム酸)の投与、および呼気終末陽圧をできるだけ高圧で維持した。また、肺高血圧の改善を目的に一酸化窒素(NO)吸入、肺血管拡張薬(可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、エンドセリン受容体拮抗薬)の投与も行ったが、肺動脈圧が体血圧を上回ることもみられ、NO吸入、肺血管拡張薬の効果は乏しかった。また、左肺下葉枝からの出血が持続するため、酸素化の維持に難渋した。酸素化の改善には、肺高血圧の改善より、肺出血のコントロールの優先度が高いと判断し、肺高血圧の改善効果の乏しい肺血管拡張薬の継続は肺出血を助長する負の面が強いと考え、ICU在室6日目に肺血管拡張薬を中止した。肺血管拡張薬の中止後、肺出血は改善し、酸素化も改善した。ICU在室23日目に気管切開を行い、呼吸器離脱が進め、ICU在室31日目には人工呼吸器から完全離脱し、ICU在室33日目にICUから退室した。【結論】重度肺高血圧に伴う肺出血時、肺高血圧の改善よりも肺出血のコントロールが重要であり、肺血管拡張薬の投与には注意が必要である。