[P16-3] 心不全加療に難渋した誘発型閉塞性肥大型心筋症の1症例
【背景】閉塞性肥大型心筋症は、左室流出路の狭窄によって心内圧較差が生じ循環血液量の低下を招く疾患である。心内圧較差が30mmHg以上であることが診断基準であるが、安静時において心内圧較差が僅かで、種々の手技・薬物で圧較差が増大する病態も存在する。心内圧較差の増大因子としては、1収縮性の増強、2前負荷の減少、3後負荷の減少といった要因がある。本症例において、心不全加療でカテコラミンを使用したが、治療に難渋し、精査の結果、誘発型閉塞性肥大型心筋症の診断に至った症例を経験したので報告する。【臨床経過】84歳、男性 主訴:呼吸苦、経過:近医で高血圧、COPDで経過観察されていた症例。呼吸苦症状の増悪で、近医を受診し胸水貯留を指摘。近くの総合病院に搬送された。右心不全と呼吸不全が著明であり、全身管理目的に当センター搬送。搬入後に気管挿管、人工呼吸器管理とした。肺高血圧、右心不全があり、血圧低下もあったことから前医よりDOBの持続静注が開始されていたが、血圧低値が持続した。DOA・NADによる昇圧を試みたが循環不全からの離脱が困難であり、病歴背景からhypovolemiaの要素があり、輸液負荷を行うと一時的に血圧上昇を認めた。心エコーで再度評価を行うと、左室内に加速血流を認め、病態把握のため第4病日に心臓カテーテル検査を施行。心尖部と左室流出路で最大66mmHgの圧較差を認め、閉塞性肥大型心筋症の診断に至り、カテコラミンを減量中止とした。中止後は、循環動態は安定し、全身状態も改善傾向となった。再度心臓カテーテル検査を行うと、心内圧較差は消失し、Brockenbrough陽性所見を認めた。同所見および経過から誘発型閉塞性肥大型心筋症の診断に至った。【結論】高齢者において、長期の高血圧罹患は肥大型心筋症の促進因子であるとの報告がある。高齢者で循環不全に陥り、カテコラミン使用で離脱ができない場合は、閉塞性肥大型心筋症が潜在している可能性を留意すべきであると考えられた。