[P17-4] CRT-D装着患者に対する胃全摘術の周術期管理に難渋した1例
【緒言】心不全やICD装着患者の周術期管理の指針はあるが、CRT-D装着患者については明確な指針がない。今回、CRT-D装着患者に対する胃全摘術の周術期管理を経験したので報告する。【症例】今回の報告について患者同意済。74歳男性(身長177cm、体重59.9kg)、胃癌に対し胃全摘の方針となった。既往に慢性心不全、心房細動、心室細動があり5年前にCRT-Dが装着された。普段は杖で10分ほど平地歩行が可能だった。CRT-DはVVIR(70-130/min)の設定で、ペーシング率99%だった。手術室にてVOO(70/min)とした。全身麻酔導入前に動脈圧ラインを確保した。導入はフェンタニル50μg、ミダゾラム2mg、ロクロニウム40mgで、維持はセボフルラン1.5%、レミフェンタニル0.1-0.15μg/kg/minで行った。入室時より血圧が80mmHg台であり、導入直後に70mmHg台となった。フェニレフリンをボーラス投与しドブタミン2.5μg/kg/minで開始した。中心静脈カテーテル挿入後にカルペリチド0.08μg/kg/min、ノルアドレナリン0.06μg/kg/minを開始し血圧が安定したため、手術を開始した。しかし手術中に血圧が65mmHgまで低下し、カテコラミンを増量したが血圧は上昇せず、血管内脱水と判断し輸液負荷によって血圧は安定した。手術は問題なく終了した。手術4時間、麻酔6時間で晶質液1500ml、膠質液1000ml、RBC560ml投与、出血760ml、尿量930mlだった。手術室にて抜管しCRT-Dを元の設定に戻しICUへ入室した。ICUで尿量減少したため5%アルブミンと晶質液を負荷し血圧と尿量を維持した。術後2日目にドブタミン、カルペリチド、ノルアドレナリンの持続投与を終了した。術後3日目に胸部単純レントゲンにて両肺野透過性低下を認めたが、酸素3L/minでSpO295%だったため一般病棟へ転棟した。その後連日フロセミドを20mg/day静注したが画像所見の改善乏しく、術後7日目のNT-proBNPが29920pg/mL、経胸壁心エコーでは心機能の増悪は認めなかったが、両側胸水貯留があった。適宜フロセミド投与を行い徐々に所見改善し労作時呼吸苦も軽減しため術後18日目に退院となった。【結語】CRT-D装着患者の周術期におけるペーシング設定、モニタリング、カテコラミン、輸液、利尿薬管理についてさらなる検討が必要である。