[P19-1] ナルデメジン投与により良好な排便コントロールが得られた術後オピオイド誘発性便秘症の1例
【諸言】オピオイド誘発性便秘症(opioid-induced constipation:OIC)治療薬であるナルデメジントシル酸塩錠が保険適応になり、緩和領域での使用症例が増加し、その有効性が報告されてきている。集中治療領域においても鎮痛薬としてオピオイドを使用する頻度は高く、排便コントロールに難渋する症例も多い。今回、胸部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(thoracic endovascular aortic repair:TEVAR)後のOICに対して、ナルデメジンを投与し有効な排便コントロールができた症例を経験したので報告する。【症例】84歳女性。生来便秘なし。既往歴に感染性胸部大動脈瘤に対しTEVER施行されていた。転倒による骨盤骨折に対して保存的治療中に喀血し、TEVER術後の肺内穿破と診断された。緊急で再度TEVERが行われ、術後挿管のままICUに入室したが酸素化不良ため人口呼吸器離脱が困難となり、ICU入室後よりフェンタニル、プロポフォール、デクスメデトミジンで鎮静し人工呼吸管理を継続していた。循環は安定していたので、早期より経腸栄養を開始した。しかし経腸栄養増量を行ったが排便は得られず、緩下剤を使用しても効果が不十分だった。OICを疑い術後7日目にナルデメジンを開始したところ、翌日から排便の増加を認めるようになった。その後呼吸状態も安定し人工呼吸器を離脱し、鎮静鎮痛に投与していたフェンタニルを中止、ナルデメジンも中止したが排便コントロールは維持できICUを退室した。【考察】OICの機序は腸管蠕動抑制と肛門括約筋収縮作用であり、ナルデメジンは両者の作用を拮抗する事で便秘を解消する作用がある。集中治療領域においても麻薬の使用頻度は高くOICの治療に難渋することも多い。排便コントロールが予後に影響するとの報告もあり、従来の緩下剤では効果が乏しい場合など、ナルデメジンが新しい選択肢として有用ではないかと考える。