[P19-6] 腹膜透析への移行と呼吸管理に難渋し、長期間の持続血液濾過透析を要した常染色体劣性多発性嚢胞腎の一例
【背景】ARPKD(autosomal recessive polycystic kidney disease)は常染色体劣性遺伝形式を示す遺伝性のう胞性腎疾患で、多くは新生児期から症状を呈する。羊水過小により肺低形成を合併している例や腎機能が廃絶している例では生後早期から人工呼吸や腎代替療法の導入が必要となる。【症例】自然妊娠成立後、在胎33週頃から両側腎腫大と羊水過少を指摘され、ARPKDが疑われた。L/T比は右肺0.092、左肺0.083 (cut off>0.18)と低く、肺低形成が疑われた。出生前に関係各科で児の治療方針について協議し、両腎摘出に伴う血圧変動リスク等を考慮し、片腎摘出して腹膜透析(PD)を導入し、PDでの管理が確立するまでは持続血液濾過透析(CHDF)を併用する方針とした。児は在胎39週2日、3070gで出生した。出生後、高頻度振動換気法(HFO)での人工呼吸管理とCHDFを開始した。高い平均気道圧(MAP)を必要とし、新生児遷延性肺高血圧(PPHN)、両側気胸を併発し、長期呼吸器管理を要した。日齢5に胸腔ドレナージを中止し、日齢7にHFOから間欠的強制換気(IMV)へ変更した。日齢21に左腎摘出術+PDカテーテル挿入術を施行した。少量よりPD注液を開始したが、徐々に残腎が腫大し、適正な注液量まで増量できなかったほか、経過中に腹膜炎を合併し、長期にCHDFを併用した。またカテーテル感染疑いや脱血不良で計8回のカテーテル入れ替えを必要とした。月齢3に残腎摘出術を行い、月齢4にCHDFから離脱した。本経過中、肺低形成に加え、腫大した残腎とPD注液に伴う横隔膜と消化管の圧排があり、抜管後の呼吸管理や栄養管理が大きな問題点となった。呼吸に関しては児に合ったフェイスマスクを様々試しながら非侵襲的陽圧換気療法(NIPPV)を継続し、栄養に関しては特殊ミルク(中リン低カリウムフォーミュラ:8806Hミルク)の濃度を濃くし、EDチューブから少量頻回注入とすることで体重増加を図ることが出来た。今後は体重増加を待ち、腎移植を行う予定である。【結論】ARPKDの重症例を経験した。進行する腎腫大により腹膜透析への移行に難渋し、長期間のCHDFを要したほか、肺低形成や横隔膜の圧排による換気障害により呼吸管理に難渋した症例であった。