第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

消化管・肝・腎

[P19] 一般演題・ポスター19
消化管・肝・腎01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場19 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:木村 友則(東京女子医科大学八千代医療センター救急科・集中治療部)

[P19-5] エクリズマブに治療抵抗性を示した、痙攣重積が初発症状であった非典型溶血性尿毒症症候群の1症例

磯部 英男, 奥村 将年, 榊原 健介, 橋本 篤, 下村 毅, 藤田 義人, 畠山 登, 藤原 祥裕 (愛知医科大学 麻酔科学講座)

【背景】
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は血栓性微小血管症(TMA)の一つである。遺伝子異常等による補体関連の異常な活性化が主病態であり,血管内皮細胞や血小板表面の活性化による自己細胞の障害を起こすことで血小板血栓が産生される。特徴として微小血管症性溶血性貧血・消費性血小板減少・血小板血栓による腎障害を認める。本邦における正確な発症数は不明だが、海外の報告では成人で100万人あたり2人と希少な疾患であり、認知度は低い。しかし致死的な急性疾患であり、原因によるが従来の治療法における予後は不良である。エクリズマブ(C5モノクローナル抗体)は、C5に結合することでそれ以降の補体活性化経路を抑制し、aHUSにおける自己細胞の障害を抑制する。近年、エクリズマブの早期投与による有効性が確認された。2013年9月に本邦で承認され、予後の改善が期待されている。
【臨床経過】50歳男性。特記すべき既往歴・家族歴はない。強直間代性の痙攣重積・意識障害のために当院へ救急搬送となった。発症1ヶ月前から微熱と皮疹の増悪・緩解を示していた。救急外来において,頭部MRIによって可逆性白室脳症(PRES)と診断され、入院となった。入院初期から溶血性貧血(8.0g/dL)・血小板減少(129×103/μL)・腎機能低下(Ccr 38.7mL/min)を示していたためTMAの治療として、ステロイドパルス療法・血漿交換を行った。意識障害は改善したが、貧血・血小板減少・腎機能低下は進行して、適宜の赤血球輸血・新鮮凍結血漿輸血・腎代替療法を必要とした。TMAの中から他疾患を除外してaHUSと診断し,第20病日にエクリズマブを投与した。投与後数日間は破砕赤血球・LDHの低下を示し(LDH 2172→837U/L)、病勢が落ち着くかに見えたが、2日後から上昇し始めた。当初から低下していたハプトグロビンは著明に低下し、貧血(6.5g/dL)・血小板減少(12×103/μL)・腎機能低下(Ccr 9.8mL/min)は高度に進行した。多臓器不全のため第27病日に死亡した。
【結論】
aHUSはその緊急性・致死性から早期に診断・治療に結びつける必要がある。しかし認知度はまだ低く、疾患に対する理解と周知が重要と考える。本症例は感染を契機として補体関連の異常な活性化を引き起こし、PRESを合併したaHUSを発症した可能性がある。aHUSへのPRESの合併は珍しい。またエクリズマブの使用経験や症例の蓄積が重要と考えるため、遺伝子検査結果、病理解剖結果、文献的考察をふまえて報告する。