第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

消化管・肝・腎

[P20] 一般演題・ポスター20
消化管・肝・腎02

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:柏浦 正広(自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科)

[P20-3] ヒドロキシエチルデンプン製剤が術後の腎機能に与える影響は、術中の出血量によって異なる。

豊永 庸佑, 平森 朋子, 齊川 仁子, 久米 克介 (北九州市立医療センター 麻酔科)

はじめにヒドロキシエチルデンプン(HES)製剤の使用は急性腎傷害(AKI)と関連する。一方で、HES製剤は効率的に血管内容量を増加させ、その作用は循環血液量が減少した場合に最大となり腎保護効果を示す。したがって、術中の出血量が少ない症例では腎毒性が腎保護効果を上回り、術後AKIと関連するかもしれない。そこで術中の出血量で層別化した上で、傾向スコアを用いてマッチングを行い、HES群と晶質液群とで術後の腎機能について比較した。方法2014年1月から2016年12月までに全身麻酔下に施行された成人の予定手術症例を対象とした。術中にHES製剤(ボルベンあるいはヘスパンダー)を投与した症例をH群、HESを投与しなかった症例をC群とした。術中の推定出血量を体重で除した値で、3つの層に層別化した。(<2、2.1―10、10.1―50 mL kg-1)それぞれの層で30個の周術期の因子を用いて1:1でマッチングを行った。術後1週間の血清クレアチニン値からKDIGO基準で術後AKIを診断した。結果対象期間内の予定手術は9,537例で、5,772例が解析対象となった。そのうちH群は1,798例(31%)、C群は3,974例(69%)であり、術後AKIは140例(2.4%)に発生した。H群、C群の症例数はそれぞれ、<2 mL kg-1の層で3,520例、960例、2.1―10 mL kg-1の層で411例、492例、10.1―50 mL kg-1の層で43例、346例であった。マッチングの結果、各層の症例数は850例、267例、38例ずつであった。<2 mL kg-1の層でH群の術後AKIの発生率が有意に高かった(3.4% vs 1.8%, p=0.03)。その他の層では術後AKIの発生率に両群間で差は認められなかった。結語術中の出血量が少量の症例では、HESの投与が術後AKIと関連する可能性が示された。