[P22-3] 特徴的な神経学的所見からWernicke-Korsakoff症候群と診断した1例
【はじめに】Wernicke脳症の三徴は意識障害,眼球運動障害,運動失調であるが,全ての徴候を満たすことは稀である。三徴が揃った症例では治療効果が低下するため,早期の発見と治療介入が重要である。
【症例】54歳の男性。日常的にアルコールを過剰摂取しており,受診当日に体動困難となっているところを発見され,意識障害のため当院に救急搬送された。初診時には発語量の減少,自発性低下,眼球運動障害と小脳失調を呈し,頭部MRI検査では両側視床内側に拡散強調画像,T2 FLAIR画像で高信号を示す病変を認めた。これらの所見からWernicke脳症と診断し,チアミン 200mgを静注すると発語量の増加,自発性の向上が得られたが,一方で失見当識や作話が顕在化し,Korsakoff症候群に至っていることが判明した。その後症状の改善は得られず,リハビリテーション目的に転院となった。入院時に測定した血清ビタミンB1値は20.2 ng/mLと低下していた。
【考察】Wernicke-Korsakoff症候群はチアミン欠乏に起因する病態であり,Wernicke脳症は可逆的だが,Korsakoff症候群に至るとチアミン投与による治療効果は期待できない。本症例では初診時に三徴を満たしており,後遺症を残す結果となった。三徴に栄養障害を加えた4項目を用いたCaineクライテリアやMRI検査は発症早期のWernicke脳症を拾い上げるために有用であり,推定診断の段階でチアミンを投与することがKorsakoff症候群への移行を防ぐために重要である。
【結語】意識障害の症例においてはWernicke脳症を鑑別として考慮し,早期にチアミンを投与する必要がある。
【症例】54歳の男性。日常的にアルコールを過剰摂取しており,受診当日に体動困難となっているところを発見され,意識障害のため当院に救急搬送された。初診時には発語量の減少,自発性低下,眼球運動障害と小脳失調を呈し,頭部MRI検査では両側視床内側に拡散強調画像,T2 FLAIR画像で高信号を示す病変を認めた。これらの所見からWernicke脳症と診断し,チアミン 200mgを静注すると発語量の増加,自発性の向上が得られたが,一方で失見当識や作話が顕在化し,Korsakoff症候群に至っていることが判明した。その後症状の改善は得られず,リハビリテーション目的に転院となった。入院時に測定した血清ビタミンB1値は20.2 ng/mLと低下していた。
【考察】Wernicke-Korsakoff症候群はチアミン欠乏に起因する病態であり,Wernicke脳症は可逆的だが,Korsakoff症候群に至るとチアミン投与による治療効果は期待できない。本症例では初診時に三徴を満たしており,後遺症を残す結果となった。三徴に栄養障害を加えた4項目を用いたCaineクライテリアやMRI検査は発症早期のWernicke脳症を拾い上げるために有用であり,推定診断の段階でチアミンを投与することがKorsakoff症候群への移行を防ぐために重要である。
【結語】意識障害の症例においてはWernicke脳症を鑑別として考慮し,早期にチアミンを投与する必要がある。