第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

中枢神経

[P23] 一般演題・ポスター23
中枢神経04

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 ポスター会場3 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:中尾 慎一(近畿大学医学部麻酔科学教室)

[P23-1] 僧房弁形成術後に脳脂肪塞栓をきたした1例

岡野 弘1,2, 大和田 玄1, 木村 康宏1, 吉田 輔1, 七尾 大観1, 藤本 潤一1, 西澤 英雄1 (1.横浜労災病院中央集中治療部, 2.杏林大学医学部麻酔科学教室)

【諸言】脂肪塞栓症候群(Fat embolism syndrome : FES)は骨髄や脂肪組織の脂肪滴が体循環に流れ込み、さまざまな症状を引き起こす病態であるが,心臓手術術後に発症した報告はほとんどない。今回、我々は僧房弁形成術後に脳脂肪塞栓(Cerebral fat embolism :CFE)をきたした1例を経験したので報告する。【症例】既往歴に高血圧と脂質異常症が指摘されていた57歳男性。手術2カ月前に重症僧房弁閉鎖不全症による心不全のために入院した。心不全の内科的治療後、僧房弁形成術及びMaze手術施行した。ICU入室後12時間経過した時点でも意識レベルがGCS:E1VTM1であったため頭部CT及び脳波を施行したが、意識障害の原因となる所見は認められなかった。その後も意識障害が遷延したため術後8日目にMRIを施行したところ、拡散強調画像で大脳皮質下に多数の高信号域が認められた。CFEを疑う画像所見であったため眼底検査を行ったところ、両側眼底にFESに特徴的な網膜所見(プルチェル網膜症)が確認され、FESの診断基準(鶴田基準)を満たしFESによるCFEと診断した。患者の意識状態は経時的に改善し、術後11日目にはE3V4M5、術後25日目にはE4V4M6、術後39日目にはE4V5M6まで改善し、術後45日目にリハビリテーション病院に転院となった。【考察・結語】脂肪塞栓は血栓と異なり流動性、可変性に富むため、数日で症状が改善するとされている。CFE患者の大部分は可逆的な経過を辿るので、神経学的予後は良好と報告されており、本症例でも経時的に意識状態の改善が認められた。心臓手術術後のCFEは非常に稀であり、疑わなければ診断できない疾患であるが、通常の脳梗塞とは経過が異なることを留意すべきである。