第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

新生児・小児

[P24] 一般演題・ポスター24
新生児・小児02

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 ポスター会場4 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:谷 昌憲(埼玉県立小児医療センター集中治療科)

[P24-1] 乳児劇症肝炎に対する脳死肝移植の1自験例

柳沼 和史1, 渡部 真裕1, 齋藤 康1, 後藤 悠大2, 清水 裕史2, 陶山 和秀1, 田中 秀明2, 細矢 光亮1 (1.福島県立医科大学 小児科学講座, 2.福島県立医科大学附属病院小児外科)

【背景】2009年に臓器移植法が改正されたが、依然本邦において小児脳死肝移植例は少なく、限られた専門施設で行われることが多い。今回劇症肝炎の4ヶ月児に対し本県において初の脳死肝移植が施行され、術前術後の集学的管理を要した貴重な症例と考えられたため報告する。

【臨床経過】症例は4ヶ月男児。黄疸、灰白色便で発症した肝機能障害、凝固障害に対し精査加療目的に当院に紹介入院となった。原因検索と並行して凝固障害に対し新鮮凍結血漿(FFP)投与で加療していたが、第4病日に意識障害、呼吸窮迫症状が出現した。肝性昏睡3度、PT21.4%であり劇症肝炎と診断した。また喀血を認めたことから凝固障害に伴う肺出血を疑い、集学的治療の目的にPICUに入室した。呼吸不全に対して人工呼吸器管理を行い、肺出血がおさまるにつれ呼吸状態は安定化した。第5病日より血漿交換(PE)と持続血液濾過透析(CHDF)を開始し、移植まで継続した。PEとCHDFの設定はアンモニア値を指標に調整し、第9病日に372 μg/dlまで上昇したものの概ね100 μg/dl台で経過した。脳波はlow voltageながら活動性は認められ、対光反射も保たれていた。凝固障害は遷延し、肝萎縮も著明、明らかな感染徴候もなく移植適応(肝移植適応ガイドラインスコアリング5点)と判断し、内科的治療に並行して伯母をドナーとした生体肝移植の準備とともに肝移植登録を進めていた。その経過中に10歳未満の男児より脳死ドナーとして肝臓提供があったため、分割された左葉外側区域を用い第12病日に脳死肝移植を施行した。摘出した肝臓の病理所見では肝実質に肝細胞は皆無であり、劇症肝炎に矛盾しない所見であった。術後の肝逸脱酵素はAST 7626 IU/L、ALT2788 IU/Lまで上昇したもののPOD1から低下に転じた。術後も凝固障害が遷延したためFFP投与とPE、CHDFはPOD8まで継続を要した。POD12に抜管し非侵襲的陽圧換気(NPPV)での管理に移行し、POD22にNPPVも離脱できた。術後の経過が落ち着いたPOD27にPICUを退室した。

【結論】乳児劇症肝炎に対して脳死肝移植を施行し、集学的管理によって救命できた1例を経験した。本邦での小児脳死肝移植は依然症例数が少なく、術前術後管理についても確立したものはないため今後の症例集積が待たれる。