第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

新生児・小児

[P24] 一般演題・ポスター24
新生児・小児02

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 ポスター会場4 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:谷 昌憲(埼玉県立小児医療センター集中治療科)

[P24-3] 【優秀演題(ポスター発表)】視床下部障害による高体温から多臓器不全を発症した小児視神経膠腫2例

山岡 正慶1, 村木 國夫1, 本多 隆也1, 花田 琴絵1, 横井 健太郎1, 秋山 政晴1, 野中 雄一郎2, 柳澤 隆昭2, 井田 博幸1 (1.東京慈恵会医科大学 小児科学講座, 2.東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座)

【緒言】小児の視神経膠腫(OPG)は極めて予後良好な疾患であり、化学療法によって機能予後改善を図る。今回、我々はOPGの治療中に視床下部障害による高体温から急激な経過で多臓器不全を来した2症例を経験したので報告する。【症例】<症例1>5歳男児。生後5か月で体重増加不良と異常眼球運動から鞍上部腫瘍が指摘され、視神経膠腫の診断のもと、化学療法を開始した。腫瘍は治療抵抗性で薬剤変更するも緩徐に増大を続けた。1歳2か月のとき、明らかな誘因なく突然の発熱・頻脈・意識障害を発症、急激に心不全と横紋筋融解、凝固障害等が進行した。集中治療を行い、発熱4日目で循環動態は安定化し解熱も得られたが、意識レベルは不良(E4V2M3)で、寝たきりの状態となった。1か月後の頭部MRIでは、腫瘍の増大や出血などはなく、大脳に広範な障害を認めた。<症例2>8歳男児。3歳の時に頭痛を主訴に鞍上部腫瘍が指摘された。腫瘍生検にて低悪性度神経膠腫と診断され、化学療法が開始された。その後、腫瘍の増大なく経過していたが、7歳で再増大し化学療法が再開となった。入院当日未明に突然の頭痛・嘔吐・意識障害が出現し、当院に救急搬送された。頭部CTにて腫瘍内出血を認め、緊急で開頭血腫除去および腫瘍部分切除術が施行された。術翌日には意識の回復(E4VTM6)を認めたが、その後、意識レベルは再増悪(E1VTM4)し、術後3日目に最大42℃の発熱を認めた。この時点ですでに横紋筋融解や急性腎障害も認めていた。その後、突然の血圧低下を認め、輸液と昇圧剤にて血圧上昇を図るも多臓器不全が急激に進行、昇圧剤の反応も不良となり、同日中に永眠された。【考察】視床下部障害に由来する中枢性発熱はよく知られた病態であるが、小児脳腫瘍の治療経過中に多臓器不全に至るほど重症化することは極めて稀である。近年、小児脳腫瘍の生命予後の改善に伴い、特に低悪性度腫瘍では機能予後を鑑みた化学療法による非侵襲的な治療が第一選択となった。今回の2症例とも治療経過で腫瘍の減量手術が検討されたが、合併症のリスクを懸念して積極的な切除は行わなかった。中枢性高体温を早期に診断することは非常に難しいが、鞍上部腫瘍の様な視床下部障害が予想される場合は、この様な病態を常に念頭に置く必要がある。敗血症や非痙攣性てんかん発作を早期に除外、並行して積極的な鎮静と体温管理にて、臓器障害進行の抑制に努めるべきである。