[P24-5] 急性リンパ性白血病の寛解導入療法中にBacillus Cereusによる敗血症で喉頭狭窄を呈した女児例
【背景】Bacillus Cereus(B. cereus)は土壌や汚水などに広く存在するグラム陽性通性嫌気性桿菌である。免疫不全患者に対する日和見感染症の原因菌として知られ、カテーテル関連血流感染をはじめ、急激に進行する壊死性筋膜炎や髄膜炎などの致死的敗血症を発症することがある。今回我々はB. cereusによる急激に進行する喉頭狭窄を伴う敗血症に対し、早期の集中治療管理によって救命できた急性リンパ性白血病(ALL)を経験したので報告する。【症例】前駆B細胞型ALLの14歳女児。寛解導入療法12日目の午前7時より発熱を認め、続いて頸部腫脹、咽頭痛、下肢筋肉痛が出現した。好中球数0 /μLであり発熱性好中球減少症(FN)と診断し、血液培養採取後にセフェピム(CFPM)の投与を開始した。その後、頸部腫脹が急激に増悪し、発熱4時間後には呼吸困難感と嚥下痛が増悪した。造影CTで下咽頭から甲状腺周囲にかけての軟部組織に著明な浮腫性変化を認めた。急激に進行する侵襲性の高い敗血症と考え、広域抗菌薬は嫌気性菌を考慮しメロペネム(MEPM)に変更した。喉頭ファイバー検査では発熱4時間後の時点では気道狭窄はなかったが、10時間後に再検したところ気道圧排所見の増悪を認め、気道閉塞のリスクを考慮しICU入室後に予防的に気管内挿管にて呼吸器管理を行った。ICU入室翌日には中心静脈カテーテルから採取した血液培養からB. cereusが検出され、B. cereusによる敗血症と診断し、速やかに中心静脈カテーテルを抜去した。同日にはすでに解熱傾向であったが、テイコプラニン(TEIC)を追加した。ICU入室3日目には頚部軟部組織の腫脹は著明に改善し、造影CTと喉頭ファイバー検査にても気道圧排所見の消失を確認し抜管した。以降、薬剤感受性を鑑みてMEPM単剤に変更し合計14日間の投与にて特に臓器障害なく抗菌薬治療を終了し、寛解導入療法を再開することが出来た。 【考察】B. cereusは免疫不全患者の菌血症の原因菌として知られ、特に白血病の好中球減少時の侵襲的な感染症の報告が散見される。B. cereus感染を早期に疑うことは困難であるが、本症例のように好中球減少時に急激に進行する軟部組織感染を認めた場合は、早期に侵襲臓器の評価と抗菌薬のエスカレーションすることが非常に重要で、特にB. cereusにはカルバペネム耐性株が存在することからグリコペプチド系薬剤の早期併用が推奨される。