第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

新生児・小児

[P24] 一般演題・ポスター24
新生児・小児02

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場4 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:谷 昌憲(埼玉県立小児医療センター集中治療科)

[P24-6] 高血圧を合併した腹部腫瘍の血圧管理にα2受容体作動薬が有用であった乳児の一例

菊地 千歌1, 小泉 沢2, 川名 信1,2 (1.宮城県立子ども病院 麻酔科, 2.宮城県立子ども病院 集中治療科)

背景:小児の腹部腫瘍で高血圧を併うものとしてはWilms腫瘍、神経芽腫が多い。Wilms腫瘍ではレニン高値によるとされる高血圧の頻度は26-60%と報告されている。神経芽腫では腫瘍からのカテコラミン放出による高血圧がみられることがある。また、腫瘍の血管圧排による腎血管性高血圧も来しうる。いずれも血圧のコントロールが合併症の予防やその後の治療を安全に行う上で重要である。その機序により降圧剤として交感神経遮断薬やレニンアンギオテンシン系阻害薬が選択される。我々はレニン活性が高値にも関わらずアンギオテンシン変換酵素阻害薬に抵抗性で、α2作動薬が著効した症例を経験したので報告する。臨床経過:月齢3か月女児、体重6.6kg、出生、発達に異常なし。3分ほどの脱力発作を主訴に当院救急外来受診した。来院時の呼吸数50-60回/分、SpO292%(room air)、心拍数190bpm、収縮期血圧(SBP)150mmHg、腹部に約6cmの腫瘤を触知した。診察中に喘ぎ呼吸、徐脈となり気管挿管されてICU管理となった。エコーで著明な心収縮力低下が認められ、利尿薬、ミルリノンが開始された。画像上、腎由来のWilms腫瘍が疑われた。レニン活性222.6ng/ml/hr、アルドステロン539.7ng/dlと高値を認め、腫瘍のレニン産生、または腫瘍の腎動脈圧排が考えられた。血中カテコラミンは基準値上限、尿中カテコラミンは基準範囲内であったが尿中VMA、尿中HVA、血中NSEが高値で神経芽腫も否定はできなかった。ミダゾラム、フェンタニル、デクスメデトミジンで鎮静し、ICU管理中は降圧剤の投与をせずにSBP80-90台で経過した。ICU入室2日目に抜管し、ICU入室3日目には一般病棟で管理を継続することとなった。ICU退室後よりBP130-140/90-110mmHgと高値を示し、ニフェジピンの内服が開始されたが、頻回な頓用の追加を要した。ニフェジピンに加えてリシノプリルが開始されたがSBP110-120mmHgの高値が続き増量にも反応しなかった。ICU管理中に投与していたデクスメデトミジンの効果を考慮しクロニジンの内服が追加された。クロニジンの内服開始後はSBP90mmHgに改善した。これに伴い心機能も改善し、来院11日目に手術目的に他院転院となった。結論:腹部腫瘍に伴うレニン活性、アルドステロンが高値の高血圧症に対しアンギオテンシン変換酵素を投与したが、治療に抵抗性であった。血中、尿中カテラミンの高値は認められなかったがα2作動薬が血圧管理に有効であった。