第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

蘇生

[P28] 一般演題・ポスター28
蘇生01

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:35 PM ポスター会場8 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:趙 晃済(京都大学大学院医学研究科 初期診療・救急医学分野)

[P28-1] 大量輸血に伴い高K血症及びTRALI、後天性血友病が併発した多発外傷の一救命例

内田 麻矢子1, 垣内 大樹1, 中間 楽平1, 鯨井 大1, 加茂 徹朗2,3, 阿野 正樹2, 伊澤 祥光1, 加瀬 建一1 (1.済生会宇都宮病院救急科, 2.済生会宇都宮病院集中治療科, 3.済生会宇都宮病院呼吸器内科)

【背景】多発外傷に対する治療において大量輸血は重要であるが、輸血副作用が生じるリスクも伴う。輸血副作用は大別すると溶血性副作用と高K血症やTRALIに代表される非溶血性副作用が挙げられる。また非常に稀であるが輸血や手術を契機に後天性血友病が生じることも報告されている。今回、多発外傷術中に大量輸血を要し、高K血症が生じ心停止となり蘇生に成功したが、同時にTRALIも発症しV-V ECMOを要し、更には後天性血友病も呈した症例を経験した。輸血副作用が複数生じ重篤化した報告は稀であり、蘇生に成功した貴重な症例であるためここに報告する。
【症例】交通外傷で多発外傷(小腸損傷、S状結腸損傷、脾損傷、多発肋骨骨折、右大腿骨骨折、右橈尺骨骨折、左上腕骨骨折)を受傷し、大量輸血及び腹部手術(Damage Control Surgery、小腸・S状結腸切除、人工肛門造設)を施行した58歳男性。特記すべき既往はない。腹部手術が終了し全身状態が改善した第39病日に左上腕骨骨折に対し骨折観血的手術を行った。その際に1500ml以上の出血が生じ、RBC18単位及びFFP6単位の輸血を要した。手術終了直後、血圧が低下し、心電図波形はwide QRS となり、心停止(PEA)に至った。二次救命処置を開始し、血液ガス検査にてK 4.8mEq/L→8.4mEq/Lと急激な上昇があり、輸血副作用と考えられた。カルシウム投与及びG-I療法を行い、推定心停止時間30分で蘇生に成功した。蘇生後はP/F ratio 89と酸素化低下を認め、 Murray score 3.25点のsevere ARDSを併発した。TRALIの可能性が考えられ、循環動態は安定していたためVV-ECMOを導入しICU入室した。V-V ECMO中はlung rest(FiO2 0.21, PEEP 8cmH2O, TV 200ml)で管理を行ったところ、呼吸状態は改善しICU入室後3日でECMO離脱、7日で抜管に成功した。その後、PT正常APTT延長の凝固障害が持続し、右大腿骨創外固定からoozingを認めた。凝固精査を行い、第9因子活性は80%と保たれていたが第8因子活性は8%と低値であり、第8因子インヒビターは3 Bethesda. U/mLと陽性であり、後天性血友病と診断した。出血は経過観察にて小康状態となり、免疫抑制療法導入を検討しながら現在リハビリ加療中である(CPC1/OPC2)。
【考察】多発外傷症例において大量輸血に伴い高K血症及びTRALIが生じ、更には後天性血友病も呈した一例を経験した。輸血副作用が複数生じることは稀であるが、いずれも適切な集中治療により良好な転機を辿った。