[P28-2] 体外循環式心肺蘇生中の下大静脈損傷による大量出血を保存的に止血し得た1症例
【背景】体外循環式心肺蘇生(ECPR)の合併症として血管損傷があり,しばしば致死的である.院内心停止に対してECPRを行い,脱血管挿入時の下大静脈損傷による後腹膜腔への大量出血を来したが,ドレナージ血液の全血輸血と下大静脈を低圧に管理することで止血,救命し得た症例を経験したので報告する.
【臨床経過】52歳男性,未破裂脳動脈瘤に対してコイル塞栓術施行後19日,下肢静脈血栓症から肺血栓塞栓症を発症,精査中に初期波形PEAの心停止となり,院内急変対応となった.胸骨圧迫行いながら集中治療室へ移動し,右大腿動静脈より経皮的心肺補助装置(PCPS)導入し蘇生した.徐々に腹部膨隆認めたため,腹腔ドレーン挿入したところ4000ml の血性腹水がドレナージされた.その後24時間で11700ml の排液が継続し,大量輸血を必要とした.造影CTにて下大静脈横隔膜直下より造影剤の漏出を認め,PCPS脱血管カニュレーション時のダイレーターによる下大静脈損傷と診断した.第2病日よりヘパリン投与を中止し,凝固能を維持するために,ドレナージされた血液を輸血フィルターを通して継続的に全血輸血した.第3病日に右内頸静脈より新たに脱血管を挿入,回転数3500rpm とし,流量3l/min 以上を維持した.第4病日より胸腔内圧を低下させるために人工呼吸器の設定をSPONTモード,PEEP 5cmH2O,PS TC100% とした.腹腔ドレーンからの排液が淡血性となり,第5病日PCPS離脱,同時に下大静脈造影行い,出血がないことを確認した.第10病日抜管,同日ヘパリン投与を再開した.第32病日一般病棟へ転棟,第103病日神経学的後遺症無しで自宅退院となった.
【結論】ECPRでは,胸骨圧迫を行いながらPCPSを装着する必要があるため,血管損傷が起こりうる.静脈損傷では,凝固能を保ち,出血部位を低圧にすることで,保存的管理で止血を得られる可能性がある.
【臨床経過】52歳男性,未破裂脳動脈瘤に対してコイル塞栓術施行後19日,下肢静脈血栓症から肺血栓塞栓症を発症,精査中に初期波形PEAの心停止となり,院内急変対応となった.胸骨圧迫行いながら集中治療室へ移動し,右大腿動静脈より経皮的心肺補助装置(PCPS)導入し蘇生した.徐々に腹部膨隆認めたため,腹腔ドレーン挿入したところ4000ml の血性腹水がドレナージされた.その後24時間で11700ml の排液が継続し,大量輸血を必要とした.造影CTにて下大静脈横隔膜直下より造影剤の漏出を認め,PCPS脱血管カニュレーション時のダイレーターによる下大静脈損傷と診断した.第2病日よりヘパリン投与を中止し,凝固能を維持するために,ドレナージされた血液を輸血フィルターを通して継続的に全血輸血した.第3病日に右内頸静脈より新たに脱血管を挿入,回転数3500rpm とし,流量3l/min 以上を維持した.第4病日より胸腔内圧を低下させるために人工呼吸器の設定をSPONTモード,PEEP 5cmH2O,PS TC100% とした.腹腔ドレーンからの排液が淡血性となり,第5病日PCPS離脱,同時に下大静脈造影行い,出血がないことを確認した.第10病日抜管,同日ヘパリン投与を再開した.第32病日一般病棟へ転棟,第103病日神経学的後遺症無しで自宅退院となった.
【結論】ECPRでは,胸骨圧迫を行いながらPCPSを装着する必要があるため,血管損傷が起こりうる.静脈損傷では,凝固能を保ち,出血部位を低圧にすることで,保存的管理で止血を得られる可能性がある.