第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

中枢神経

[P3] 一般演題・ポスター3
中枢神経02

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:40 AM ポスター会場3 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:守谷 俊(自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科)

[P3-1] 多発脳梗塞を合併したStaphylococcus aureusによる敗血症性ショックの一例

奥野 善教, 趙 晃済, 堤 貴彦, 安尾 俊祐, 角田 洋平, 篠塚 健, 下戸 学, 柚木 知之, 大鶴 繁, 小池 薫 (京都大学医学部附属病院 初期診療・救急科)

【背景】感染性心内膜炎による全身塞栓症はしばしば合併するが、菌血症単独による全身塞栓症の報告は少ない。我々は、入院後に発症したMSSAによる敗血症性ショックに多発脳梗塞を合併した一例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は88歳女性。来院4日前より突然動けなくなり、倒れていたところを発見され当院搬送となった。来院時はBP 108/43mmHg, HR 83回/min, RR 15回/min, SpO2 100%(room air), BT 35.8℃, GCS E1V1M4と意識障害を認めた。採血検査ではWBC 9130/μl, CRP 1.8mg/dL, PCT 0.255ng/mlと上昇認め、Cre 0.98mg/dL, BUN 76mg/dLと上昇認めたが、その他意識障害の原因となる異常所見は認めなかった。頭部CTや体幹部CTでも明らかな原因は指摘できなかった。既往歴に認知症、統合失調症があり、非痙攣発作や現疾患の悪化、感染症などを疑い、各種培養を提出の上精査加療目的に同日入院とした。入院3日目に行った髄液検査では細胞数上昇なく髄膜炎、脳炎は否定的であった。ただし脳波で左前頭葉をfocusとした非痙攣性発作を疑う所見あり、頭部MRIで左前頭葉に小梗塞を認めたため、脳梗塞および非痙攣性発作と診断の上アスピリン100mg, レベチラセタム2000mg/dayで開始した。しかし入院4日目に突然の血圧低下あり、敗血症性ショックと診断し挿管の上ICUへ入室した。ICU入室後、再度各種培養検査提出の上MEPM、VCMを開始した。入院時の血液培養は陰性であったが、入院4日目の血液培養よりMSSAが検出されたため、カテーテル関連血流感染症や感染性心内膜炎を疑った。入院7日目に経食道心エコーを行ったが、弁に疣贅は見られず、カテーテル類の先端培養は陰性で血流感染症を示唆する初見は認めなかった。入院13日目の頭部MRIでは右小脳半球、両側大脳半球に多発脳梗塞を認め、Septic emboliを疑い再度経食道心エコーを行なったが疣贅は認めず、体幹部CTでも感染性動脈瘤やその他のfocusは認めなかった。多発性脳梗塞に対する治療について、菌血症によるseptic emboliでは当初の脳梗塞の説明がつかず、非常に悩ましかったが塞栓源不明の脳塞栓症(ESUS)と考えアスピリンを継続とした。意識障害は徐々に改善し入院35日目にリハビリ病院へ転院となった。【結論】MSSA菌血症ではIEがなくても脳梗塞に注意が必要である。