[P3-2] 心原性脳梗塞による術後覚醒遅延を起こし救命しえた1例
呼吸器外科の手術後、心原性脳梗塞による術後覚醒遅延を起こし、血栓吸引療法にて血栓を回収し救命しえた1例を経験したため報告する。【背景】覚醒遅延は様々な原因をもとに発生する術後合併症の一つである。しかし覚醒遅延に対する具体的なプロトコールやガイドラインはほとんどないのが現状である。その一方で覚醒遅延の原因の中でも脳梗塞(特に心原性)はその予後の改善ひいては救命のために可及的速やかに診断・治療を行う必要がある。【症例】80歳男性、右下葉肺癌に対して右下葉切除およびリンパ節郭清を予定していた。既往については高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、脳梗塞、心房細動があり、各々に対して内服治療を近医にて受けていた。脳梗塞については散在性の脳梗塞が術前評価のCTにて確認されていたが、軽度の構音障害を認めるのみであり家事全般を自ら行うことが可能であった。脳梗塞に対してバイアスピリン、心房細動に対してイグザレルトを内服していたが各々術前7日前および1日前に休薬しヘパリンによる置換は施行しなかった。X日、全静脈麻酔下に肋間神経ブロックを併用し上記術式を予定通り施行した。手術終了し鎮静剤投与終了後覚醒えられず。GCS E1V1M1であり覚醒遅延と判断した。自発呼吸は認めたため抜管したが、ICU帰室後1時間経過し右babinski陽性、ナロキソン投与も覚醒度変化なし。頭部CT施行し、左中大脳領域の皮髄境界不明瞭、中大脳動脈の高吸収を認め急性期脳梗塞と診断、血栓回収療法を施行した。その後リハビリを継続し、X+44日GCSでE4V2M5、経口にて固形物摂取開始、X+53日にリハビリ病院へと転院となった。【結論】今回我々は心原性脳梗塞を原因とする術後覚醒遅延を経験し、それをもとに院内における覚醒遅延プロトコールを作成するに至った。