第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

中枢神経

[P3] 一般演題・ポスター3
中枢神経02

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:40 AM ポスター会場3 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:守谷 俊(自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科)

[P3-4] 術後に脳梗塞を発症したが早期発見・治療介入により良好な神経学的転帰をたどった一例

井戸 允清1, 清水 智明2, 北 貴志2 (1.大阪警察病院 臨床研修医指導センター, 2.大阪警察病院 麻酔科)

【背景】近年、抗血栓薬投与中の患者に対して、大小さまざまな手術が行われる機会が増えている。当院では循環器内科を中心に抗血栓薬休薬指針を策定して患者ごとに運用している。しかし、一定の確率で出血や梗塞イベントが生じることは不可避である。今回、抗凝固薬を術前に中止して術直後に心原性と思われる脳梗塞を発症したが、早期の発見と治療介入により良好な転帰をたどった症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は81歳男性。78歳時に心房細動を指摘されてリバーロキサバンを導入されていた。56歳時に胃癌に対して幽門側胃切除術を施行されていた。今回、残胃癌と新たに肝細胞癌を指摘されて残胃全摘術と肝左葉切除術の方針となった。院内ガイドラインに従い、リバーロキサバン、プレタールともに手術2日前から中止、ヘパリン置換としていた。手術は予定通り終了し覚醒後に四肢の動きが保たれていることも確認されていた。ICU帰室106分後、バイタルサイン測定のために訪床したICU看護師によって右上下肢の脱力を発見された。当直医師に報告、ドレーンが留置されていたためMRIの撮像はできなかったため、頭部CT撮像の方針となった。左中大脳動脈領域にhyperdense signを認めたため、脳神経外科医にコンサルトし、緊急脳血管造影検査を施行、左中大脳動脈閉塞の所見を得たため、血栓回収術が続けて行われた。。発症約180分後に血栓回収され再開通を得た。血栓の性状から心原性塞栓が疑われた。血栓回収後に左被殻出血を生じたがその後のフォローで血腫の増大は認めなかったため抗凝固療法を再開となった。右上下肢のMMTはそれぞれ0/0から3/5程度に改善しており、高次機能も含めリハビリ継続中である。【結論】抗凝固薬を休薬した患者の術後に脳梗塞発症は一定の確率で生じており、その後の対応により患者の転帰は大きく変わることが想定される。術直後からICUもしくは病棟帰室後も患者の状態を細やかに把握し、必要と判断すれば画像検査を行い専門医にコンサルトすることが望ましい。脳梗塞に対する血栓回収のgolden hourは6時間であり、自施設で血栓回収可能な設備を備えていない施設でも地域との連携により治療介入可能な時間に症状を発見できるような術後管理を標準化することで患者の予後を担保することが可能になると考える。