[P31-4] 自己抗体によるAPTT延長を認めた大動脈弁置換術の症例報告
【背景】自己抗体を有し術前にAPTTの延長を認めた症例における大動脈弁置換術の麻酔を経験したので報告する.抗リン脂質抗体症候群のような血栓疾患では,周術期の血栓予防管理が重要である.人工心肺中はACTによる管理が一般的であるが,自己抗体によってACTが過大評価される危険がある.本症例では,血中ヘパリン濃度を直接測定できるHMS-Plusを基準とし,HEMOCHRONR Jr. Signature+(ヘモクロンJr)、Actalyke MINI 2(MINI)の3機種でACTを測定しながら,安全に周術期管理を行うことができた. 【臨床経過】患者は75歳女性,身長146cm,体重45cm,重症大動脈弁狭窄症と労作性狭心症に対し大動脈弁置換術と冠動脈バイパス術が予定された.下肢静脈血栓の既往をもち術前検査にて血小板数20.6万, PT-INR1.01,APTT57.0秒と延長を認めた.クロスミキシング試験にて自己抗体の存在が示唆されたが,詳細な確定診断と平行して心臓手術を行う方針となった.HMS-Plusを基準に初回投与12000単位と追加投与を決定した.図に示した通り,ACT計測値も信頼し得ると判断し,帰室14時間後からヘパリンの持続投与を開始した.術後 3日目からワーファリン内服を再開し血栓症なく退院した.本症例は術後の検査にて抗リン脂質抗体陽性のため確定診断に至った.【結論】HMS-Plusを基準としたヘパリン投与にて安全に管理しえた.同時測定の結果,術後管理にも有用であった.

