[P32-5] 術後悪心嘔吐に対するデキサメタゾン予防投与は有効か?
【背景】術後悪心嘔吐(PONV)発症率は女性に多く、婦人科手術後のPONV発症率は80%前後と言われている。PONVの危険因子は、女性、PONVの既往、術後オピオイド使用、揮発性吸入麻酔薬、婦人科手術、長時間手術等であり、婦人科手術はPONVのハイリスク症例に該当する。デキサメタゾンの予防投与は賛否両論で、その効果については明らかではない。【目的】当院では婦人科手術でデキサメタゾン投与を行っているが、その効果は検証されていない。本研究ではPONVの頻度と発症時期及び、デキサメタゾンのPONV予防効果について検討した。【方法】全身麻酔下で行った婦人科の開腹手術又は腹腔鏡下手術を対象とし、デキサメタゾンのPONV予防効果を、カルテの記述内容から後ろ向きに検討した。麻酔方法は全身麻酔+硬膜外麻酔または、全身麻酔+術後フェンタニル持続静注で行った。麻酔導入はプロポフォール、フェンタニル、レミフェンタニル、ロクロニウムで行った。麻酔維持は酸素、空気、セボフルランまたはデスフルランで行い、レミフェンタニル、フェンタニル、ロクロニウムを併用した。硬膜外麻酔は0.5%ロピバカインを使用し、術後は0.25%レミブピバカイン+ドロペリドール4mL/hrで持続投与した。術後フェンタニル持続静注は、フェンタニル(10-20μg/mL)+ドロペリドールを2mL/hrで持続投与した。PONV予防のための術前デキサメタゾン投与は3.3mgとし、投与の有無は麻酔担当医師の判断で行った。術前投与の有無により、デキサメタゾン投与群(D群)と非投与群(C群)に振り分け、PONVを検討した。【結果】症例数はD群16例、C群89例だった。PONV発生頻度はD群50%、C群50%であり、デキサメタゾンのPONV予防効果は認められなかった。C群内でPONVの有無により2群に分けてその他の要因を検討した。ドロペリドール術中投与によりPONVが減少する傾向(40% vs. 55%)や、術後フェンタニル持続投与によりPONVが増加する傾向(60% vs. 43%)が認められたが、統計学的有意差は認められなかった。【結論】文献上、デキサメタゾンはPONV予防に有効とされているが、本研究では無効だった。当院ではPONVの発症率が低く、D群が少なかったことから、デキサメタゾンの効果を正しく判定できなかった可能性が高い。症例数を増やして再検討した結果を、本大会で発表する予定である。