[P33-1] 集学的治療により救命し得た劇症分娩型A群溶連菌感染症の一例
【背景】A群β溶血性連鎖球菌(以下A群溶連菌)感染症は, 時に急激な経過でショックやDIC, 多臓器不全から死に至る敗血症病態を呈することがあり, 劇症型と呼ばれている. 特に妊娠末期に上気道炎などから血行性に子宮筋層感染し, 急激に分娩を進行させるとともに, 敗血症性ショックが進行して高率に胎児・母体死亡をもたらす病態を劇症分娩型という. 今回我々は死児の分娩後にショックバイタルでDICを併発し, 集学的治療により救命し得た劇症分娩型A群溶連菌感染症の一例を経験したので報告する. 【臨床経過】26歳女性. 2経妊2経産(2帝切). 前日に40℃の発熱と鼻出血, 性器出血を認め, 妊娠33週0日に近医受診した. すでに排臨しており, 救急車で当院に転院搬送となった. 到着時, BP 97/54mmHg, HR 140bpm, SpO2 100%(O2 10L), BT 39.6℃であった. 分娩は発露まで進行しておりその場で破膜し児を娩出したが蘇生に反応せず死亡を確認した. 母体は止血処置を行うも出血コントロール不良で, SOFAスコア14点, 急性期DICスコア8点であり敗血症性ショック・DICとして治療が開始された. A line, CVカテーテルの留置後, 輸液負荷とノルアドレナリン投与により血圧の維持に努め, AT3製剤, RCC, FFP, PCなどの補充療法や免疫グロブリン投与も開始された. また乏尿とクレアチニンの上昇から急性腎障害として鼠径部より透析用カテーテルを留置し, CHDF(持続的血液濾過透析), PMX-DHP(エンドトキシン吸着療法)を開始した. 弛緩出血コントロールのため, Bakriバルーンを留置し圧迫止血を試みた. 出血コントロールに目途がつき始めたころ, SpO2の低下と不穏・せん妄が出現したため, 鎮静・挿管管理を開始した. 血液検体のグラム染色で連鎖球菌が検出され, A群溶連菌感染を疑いクリンダマイシン+アンピシリンによる抗生剤治療を開始した. その後血液培養と児表面組織培養でStreptococcus pyogenesが検出された. 第2病日には出血がある程度コントロールされたためトロンボモジュリン製剤を開始した. 第10病日から血小板の上昇を認めトロンボモジュリン製剤を中止した. その後全身状態の改善を認め, 第17病日に抜管, 第21病日にICUを退室し, 第33病日に退院となった.【結論】数時間で死に至ることのある劇症分娩型A群溶連菌感染症に対して, 早期から集学的治療を開始し救命することができた一例を経験した.